時空を超越するクロスオーバー・ソウル 〜スティーヴィー・ワンダー『インナーヴィジョンズ』(1973)【最強ロック名盤500】#259

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#259
Stevie Wonder
“Innervisions” (1973)

ミクスチャー・ロックと言うべきか、クロスオーバー・ソウルとでも言うべきか。

単なるソウルやポップスでないことだけは確かだ。

各々の楽曲にはジャズやファンク、ラテンやフォークなど様々な要素が入っているにも関わらず、まったく散漫な印象を与えず、コンセプト・アルバムのようにまとまりがいい。

ほとんどの曲ですべての楽器を演奏し、プロデュースも自身で行い、徹底して自分の音楽を追求し極めた様は、後のプリンスの手本となったに違いない。

タイトルの「Innervisions」は、内省(=Inner)と社会のビジョン(=Visions)をテーマにしているという。個人的な思索と社会的な問題提起を織り交ぜたシリアスな音楽は、歌詞がよくわからなくても心の奥底に深く突き刺さり、やがて静かに感動が満ちてくる。

スティーヴィー・ワンダーの最高傑作に挙げる人も多い本作は、1973年8月にリリースされた、通算16枚目のアルバムだ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 トゥー・ハイ
2 愛の国
3 汚れた街(全米8位)
4 ゴールデン・レディ

SIDE B

1 ハイアー・グラウンド(全米4位)
2 神の子供たち
3 恋
4 くよくよするなよ(全米16位)
5 いつわり

A3、B1、B4と3曲のヒット・シングルが生まれ、アルバムは全米4位、全英8位の大ヒットとなった。そして、この年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞した。

A1「トゥー・ハイ」の幕開けからいきなり本作の世界観に引き込まれる。ジャズ・ファンク調のめちゃカッコいいサウンドながら、その歌詞はドラッグに溺れる若者を描いた重い内容だ。

B1「ハイアー・グラウンド」は、転生や魂の進化をテーマにしたファンク・ナンバー。1989年にレッチリがカバーしてシングルリリースし、米オルタナティヴ・チャートの11位まで上昇する、彼らにとって初めてのヒット・シングルとなった。このカバーもまた素晴らしい。

今聴いてもまったく古びていない音楽性は、時空を超越しているかのようだ。

今までまったく聴いてこなかったスティーヴィー・ワンダーに突然開眼して、70年代の傑作群を順番に聴いているのだけれども、これもまたしばらくヘビロテになったほど、ハマってしまった。

ここのところまた、別のアルバムを聴き始めているけれども、これ、どこまで続くのかな。

↓ 全米4位の大ヒットとなった「ハイアー・グラウンド」。

↓ 全米8位のヒットとなった「汚れた街」。差別と格差に直面する黒人青年のストーリーをリアルに描写している。

(Goro)

created by Rinker
ユニバーサル
¥1,559 (2025/04/26 15:55:20時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
Motown
¥5,362 (2025/04/26 15:55:20時点 Amazon調べ-詳細)