⭐️⭐️⭐️⭐️
Stevie Wonder
“Innervisions” (1973)
ミクスチャー・ロックと言うべきか、クロスオーバー・ソウルとでも言うべきか。
単なるソウルやポップスでないことだけは確かだ。
各々の楽曲にはジャズやファンク、ラテンやフォークなど様々な要素が入っているにも関わらず、まったく散漫な印象を与えず、コンセプト・アルバムのようにまとまりがいい。
ほとんどの曲ですべての楽器を演奏し、プロデュースも自身で行い、徹底して自分の音楽を追求し極めた様は、後のプリンスの手本となったに違いない。
タイトルの「Innervisions」は、内省(=Inner)と社会のビジョン(=Visions)をテーマにしているという。個人的な思索と社会的な問題提起を織り交ぜたシリアスな音楽は、歌詞がよくわからなくても心の奥底に深く突き刺さり、やがて静かに感動が満ちてくる。
スティーヴィー・ワンダーの最高傑作に挙げる人も多い本作は、1973年8月にリリースされた、通算16枚目のアルバムだ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 トゥー・ハイ
2 愛の国
3 汚れた街(全米8位)
4 ゴールデン・レディ
SIDE B
1 ハイアー・グラウンド(全米4位)
2 神の子供たち
3 恋
4 くよくよするなよ(全米16位)
5 いつわり
A3、B1、B4と3曲のヒット・シングルが生まれ、アルバムは全米4位、全英8位の大ヒットとなった。そして、この年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞した。
A1「トゥー・ハイ」の幕開けからいきなり本作の世界観に引き込まれる。ジャズ・ファンク調のめちゃカッコいいサウンドながら、その歌詞はドラッグに溺れる若者を描いた重い内容だ。
B1「ハイアー・グラウンド」は、転生や魂の進化をテーマにしたファンク・ナンバー。1989年にレッチリがカバーしてシングルリリースし、米オルタナティヴ・チャートの11位まで上昇する、彼らにとって初めてのヒット・シングルとなった。このカバーもまた素晴らしい。
今聴いてもまったく古びていない音楽性は、時空を超越しているかのようだ。
今までまったく聴いてこなかったスティーヴィー・ワンダーに突然開眼して、70年代の傑作群を順番に聴いているのだけれども、これもまたしばらくヘビロテになったほど、ハマってしまった。
ここのところまた、別のアルバムを聴き始めているけれども、これ、どこまで続くのかな。
↓ 全米4位の大ヒットとなった「ハイアー・グラウンド」。
↓ 全米8位のヒットとなった「汚れた街」。差別と格差に直面する黒人青年のストーリーをリアルに描写している。
(Goro)