Teddy Pendergrass – Do Me
また日本から、神様がひとりいなくなってしまった。
わたしは小学生の頃からこの神様に、腹がよじれ、あごがはずれそうになるほど笑わされた。
そのうちわたしの家庭では彼とそのグループが出ている番組を見ることを禁じられた。「くだらないから」ということだった。
おかげでわたしは「くだらない」という言葉を、誉め言葉として覚えた。
当時は多くの大人が彼らを嫌い、子供たちはみんな彼らが大好きだった。
彼はビートルズをはじめ、ロックやソウルが好きだったらしい。ちょうどさっきTwitterで、彼が昔書いた「最近、ユーライア・ヒープにハマっている」という記事を読んだ。
また、あの「ヒゲダンス」は彼が「ジャケが気に入って」偶然買ったレコードから生まれたという。
この、テディ・ペンダーグラスの「ドゥ・ミー」が、その原曲だ。
これをアレンジして「ヒゲのテーマ」として使用していた。
たくさんの子供たちが、学校でも家でも、あのダンスを真似していた。わたしもそのひとりだ。
最近は千鳥の大悟を弟のように可愛がり、よく一緒に飲んでいたのは有名な話だ。
大悟によれば、神様は氷の入ったグラスに焼酎・水・焼酎の順に入れ、混ぜずに飲むのだそうだ。味の変化を楽しむために。
わたしはそれも真似してみた。
彼が「いいよなぁ~」と言いながら女子が使ったスプーンやグラスを舐めるおじさんのキャラが大好きだった。
彼の元付き人だったという芸人によると、彼がそのキャラクターをつくったのは、アイドルと間接キスがしたかったからだという。
彼は生涯独身だったけれども、たぶん生涯変態でもあったのではないか。変態の神様なんて、最高にカッコいい。もちろん、「変態」もわたしは誉め言葉としてしか使ったことがない。
大悟が彼のコント番組にレギュラーで出るようになって、こんなことを話していた。
「わしらの世代はダウンタウンさんに影響を受けてお笑いを始めたから、お笑いの教科書で言うところのレッスン10ぐらいから始めてる。でも今わしは神様から、レッスン1のお笑いをあらためて学ばせてもろうてる」と得意げに、心から嬉しそうに、語っていた。
今日、わたしは仕事中に、小学生の男の子が4人で遊んでいるのに出くわした。
(さっさと家へ帰れよ)と心の中で思いながら横を通り過ぎると、「シムラが…」と聞こえて来た。あの子供たちも40年以上前のわたしと同じように、腹がよじれ、あごが外れそうになるぐらい、笑わされたのだろうか。
日本のお笑いの基礎を創った神様は、いま日本にいるすべての世代の人々を笑顔にしてきた、真の国民的ヒーローだった。
よりによって、今の日本にいちばん必要な人がいなくなったかと思うと、本当に残念でならない。
志村けんさんの冥福を心から祈るとともに、日本がこれ以上暗くならないことを、心から願おう。
(Goro)