
英ロンドンで結成されたバンド、ロキシー・ミュージックは1972年にデビューした。
当初はその派手な衣装や、デヴィッド・ボウイの前座を務めたことなどから、当時流行中のグラム・ロックの一派として宣伝されていたが、実際の音楽はグラム・ロックのひと言で括れるほど単純なものではなかった。
それはヨーロピアン・ダンディズムとでも言うべきクセの強い個性の持ち主であるヴォーカリストのブライアン・フェリーと、シンセサイザーを操る金髪ロン毛の前衛音楽技師、ブライアン・イーノという、特異すぎる個性がぶつかりあって生まれた、異形の未来型ロックンロールとでも言うべきものだった。
2ndアルバムを最後にイーノが脱退すると、フェリーのヨーロッパ風アート志向が強まり、耽美的でエレガントでキッチュなロキシー・ワールドを完成させたが、どこかうっすらと狂気を感じさせるような異形のポップスであることはデビュー以来通底している音楽性だったように思う。
とにかく彼らの音楽を分類できるジャンルは今もって無い気がする。一代限りの突然変異のようなものだった。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきロキシー・ミュージックの至極の名曲5選です。
Virginia Plain
1972年発表の、彼らのデビュー・シングル。全英4位のヒットとなった。
まさに未来型サウンドのロックンロールとでも言うべき独特の曲だ。ロキシーではわたしはこれがいちばん好きだ。
このフェリーのヴォーカルを聴くと、YMOの高橋ユキヒロが彼の影響を受けているのがすぐにわかるが、そのフェリーはボブ・ディランの歌い方に影響を受けている。
Do the Strand
2ndアルバム『フォー・ユア・プレジャー(For Your Pleasure)』のオープニング・トラック。
三つ揃いのスーツで歌うダンディなフェリーと、金髪を長く伸ばしギンギラの衣裳でシンセを操作するイーノという両ブライアンの個性のぶつかり合いが、まさに初期ロキシーの特異な音楽を生み出していた。
Love is the Drug
5thアルバム『サイレン(Siren)』からのシングルで、全英2位、全米30位の大ヒットとなり、彼らの中では最も知られた曲となった。
初期のエキセントリックな要素は影を潜め、ポップソングとして親しみやすくはなっているが、それでもどこか「洗練された狂気」みたいな危なっかしい感じは失われていない。
More Than This
彼らの8枚目にして最後のアルバム『アヴァロン(Avalon)』からのシングルで、全英6位のヒットとなった。
未来型ロックというより、もはやこの世のものではないような、異世界のスケールと美しさに溢れた曲だ。
Avalon
彼らの最高傑作と評価されることの多い8thアルバム『アヴァロン』のタイトル曲。これも異世界の美しさに溢れた曲だ。
ハイチの女性歌手、ヤニック・エティエンヌの天使のようなバック・ヴォーカルがまた、この世のものとは思えぬあの世のような世界観を醸し出している。
入門用にロキシー・ミュージックのアルバムを最初に聴くなら『ベスト・オブ・ロキシー・ミュージック』がお薦め。ここで選んだ5曲を含め、最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
(Goro)
