まさかレッチリがこんな世界的成功を収めるビッグ・バンドになるとは夢にも思わなかった。
わたしが彼らのことを知ったのは1980年代後半で、メンバーが全裸で股間に靴下だけをぶらさげてライヴをする奇天烈なバンドとしてだった。わたしは写真を見て爆笑し、好感は持ったものの、コミック・バンドの類かと思っていた。
91年にワーナーに移籍すると、通算で5枚目のアルバム『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』で大ブレイクする。わたしもこの力強くぶっ飛んだアルバムで彼らのファンになった。
天才プロデューサーのリック・ルービンの手腕もあり、レッチリならではの個性を生かした、ファンク、ヒップホップ、パンク、ハード・ロックを完璧に融合させた、独創的なミクスチャー・ロックが誕生した。
彼らの音楽は肉体的な躍動感と刺激的でパワフルなサウンド、そして感情を揺さぶるメロディがある、唯一無比のロックだ。決してマッチョなだけではない、抒情的で繊細な音楽性が彼らの魅力だ。
以下は、わたしが愛するレッチリの至極の名曲ベストテンです。
Higher Ground
4枚目のアルバム『母乳(Mother’s Milk)』からのシングルで、原曲はスティーヴィー・ワンダーのカバーだ。全英54位と、彼らにとっては初めてのチャート・インとなった。
このアルバムからギターのジョン・フルシアンテとドラムのチャド・スミスが加入して、最強ラインナップとなった。
The Adventures of Rain Dance Maggie
2009年に2度目の脱退をしたフルシアンテに替わり、新ギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーが加入した10thアルバム『アイム・ウィズ・ユー (I’m With You)』からのシングルで、全米38位、全英44位。アルバムは全米2位、全英1位、日本2位と、世界的な大ヒットを記録した。
耳から離れないベースラインとわかりやすいコーラスを持つ、一度聴いたら忘れられないキャッチーな曲だ。
PVは大昔のビートルズやU2を思い出させる、ビルの屋上でのゲリラ・ライヴを撮影したもの。この曲に自信があり、5年ぶりの新曲ということもあってのアイデアだろう。
Snow (Hey Oh)
28曲入り2枚組の大作アルバム『ステイディアム・アーケイディアム』(Stadium Arcadium)』からのシングル。全米22位、全英16位。
ヴォーカルのアンソニーは「ドラッグですべてを台無しにしたけれど、人生をやり直し、生き続けることを歌ったんだ」と語っている。
決意を新たにして、おふざけなしで「なあ、おれの話を聞いてくれよ」と語りかける、いつになくマジメで和やかな素の表情を捉えたPVが素敵だ。
Can’t Stop
世界中でナンバー1となり、日本でもオリコン4位という驚異的な売れ方をした8thアルバム『バイ・ザ・ウェイ(By The Way)』からのシングルで、全米57位、全英22位。
その後、ライヴのオープニング・ナンバーとして定番となった曲だ。
Scar Tissue
7thアルバム『カリフォルニケイション(Californication)』からのシングルで、全米9位、全英15位のヒットとなり、グラミー賞も獲得した。フルシアンテの哀愁漂うヒリついたギターがたまらない。
スカー・ティッシュとは、薬物中毒者の体に出る瘢痕のことだそうで、アンソニーの自伝のタイトルにもなっている。
Californication
7thアルバム『カリフォルニケイション』のタイトル曲。シングルでは全米69位、全英16位。
彼らの故郷でもあり、ハリウッドに象徴される巨大資本主義の象徴の地であるカリフォルニアを、すべての夢と欲望を叶える約束の地として皮肉っぽく語る。カート・コバーンの悲劇にも触れている。
Dani California
9thアルバム『ステイディアム・アーケイディアム』からのシングルで、全米6位、全英2位の大ヒットとなった。日本でも映画『デスノート』の主題歌として使用されたこともあり、映画と共に大ヒットした。
PVはエルヴィスからニルヴァーナまで、ロックの歴史を辿るようにして様々なアーティストを連想させるコスプレをしていく楽しいものだ。
By the Way
8thアルバム『バイ・ザ・ウェイ』からのシングルで、全米34位、全英2位。
メロディアスな部分と激しいカッティングパートが交互に出てくる、レッチリの真骨頂とも言えるパワフルな曲だ。
Give It Away
1991年発表の大名盤『ブラッド・シュガー・セックス・マジック(Blood Sugar Sex Magik)』からのシングルで、米オルタナ・チャート1位、全英9位のヒットで彼らの出世作となった、ロック史上最強のベース・ラインを持つ代表曲だ。
灼熱の暑苦しさのPVも強烈なインパクトだった。
Under the Bridge
『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』からのシングルで、全米2位、全英13位となる、彼らにとって初めての世界的ヒットとなった名曲だ。
聴きやすくて美しい作り込まれたロック・バラード、というのとは全然違う、武骨で不器用だけど、意を決して初めて本当のことを語ろうとしているリアリティがある、胸に突き刺さるように響く、誠実な音楽だ。
入門用にレッチリのアルバムを最初に聴くなら、『グレイテスト・ヒッツ』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はほぼ網羅されています。
(by goro)