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Little Walter
“The Best Of Little Walter” (1958)
米ルイジアナ州出身のリトル・ウォルターは、18歳でマディ・ウォーターズのバンドに加入した、ブルース・ハープ(ハーモニカ)奏者だ。
2008年のアメリカ映画『キャデラック・レコード』は、1950年にシカゴに誕生したチェスレコードの盛衰を描いた映画だが、その中で描かれるリトル・ウォルターは、バンドのボスであるマディ・ウォーターズでさえ手を焼くめちゃくちゃな奴だった。
喧嘩っ早くてすぐにブチギレるアブない奴で、そのうえ常に拳銃を持ち歩いている。
映画の中では、道端でリトル・ウォルターを名乗ってハーモニカを吹いて聴かせている偽者を見つけて躊躇なく拳銃で撃ち殺すシーンもあったほどだ。(実話なのか?)
しかしそれでもブルース・ハープの演奏は天才的であり、革新的な奏法と、いわゆる「アンプリファイド・ハープ」の第一人者としても知られている。
アンプリファイド・ハープとは、自分のハーモニカの音がエレキギターの大音量にかき消されることに不満を抱いていたウォルターが、小さなマイクをハーモニカと一緒に手に包むように持ち、そのマイクをギターアンプに接続し、音の増幅だけでなくあえて音が歪むように音色を変化させた技法だ。彼が初めてやったということでもないらしいが、彼のその衝撃的な音色によって一気に知られることとなり、アンプリファイド・ハープはウォルターの代名詞ともなった。この辺りは、ジミ・ヘンドリックスがエレキギターで行った革新性とアプローチがよく似ている。
1952年には、ブルース・ハープをメインにしたインスト曲「ジューク」をソロ名義のシングルでリリースし、米R&Bチャート1位の大ヒットとなった。その後も3年間の間に9曲をR&Bチャートのトップ10に送り込み、バンドのボスであるマディ・ウォーターズ以上の商業的成功を収めた。さらに1955年には代表曲となる「マイ・ベイブ」で、再びR&Bチャート1位を獲得する。
本作はそんなリトル・ウォルターの1952〜55年のトップ10ヒットを10曲とB面曲2曲を収録した、実質的な彼の1stアルバムだ。チャック・ベリー、マディ・ウォーターズに続いて、チェス・レコードでは4枚目のLPとしてリリースされた本作は、当時のリトル・ウォルターの人気の高さを物語っている。カッコ内は米R&Bチャートの最高順位だ。
【収録曲】
SIDE A
1 マイ・ベイブ (1位)
2 サッド・アワーズ (2位)
3 ユーアー・ソー・ファイン (2位)
4 ラスト・ナイト (6位)
5 ブルース・ウィズ・ア・フィーリング (2位)
6 キャント・ホールド・アウト・マッチ・ロンガー
SIDE B
1 ジューク (1位)
2 ミーン・オールド・ワールド (6位)
3 オフ・ザ・ウォール (8位)
4 ユード・ベター・ウォッチ・ユアセルフ (8位)
5 ブルー・ライト
6 テル・ミー・ママ (10位)
代表曲の「マイ・ベイブ」は、チェスレコードお抱えの天才ソングライター、ウィリー・ディクソンの作だ。この曲はローリング・ストーンズがアルバム『ストリップト』でカバーを披露しているが、ミック・ジャガーはことのほかリトル・ウォルターがお気に入りのようで、ストーンズによるブルースのカバー・アルバム『ブルー・アンド・ロンサム』では4曲ものカバーを収録している(本作には収録されていないが)。
その荒すぎる気性のせいでマディ・ウォーターズ・バンドからもやがて去ったリトル・ウォルターは、1968年、37歳の若さで世を去った。
死の原因もやはり、ストリートでの喧嘩で負ったケガによるものだった。
↓ R&Bチャート1位のヒットとなった代表曲「マイ・ベイブ」。わたしも一番好きな曲だ。
↓ R&Bチャート2位のヒットとなった「ユーアー・ソー・ファイン」。これも好きな曲だ。
(Goro)