レッド・ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』(1975)【最強ロック名盤500】#214

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【最強ロック名盤500】#214
Led Zeppelin
“Physical Graffiti” (1975)

レッド・ツェッペリンのアルバムの中でもいちばん楽しく聴けて、いちばん踊れるアルバムだ。踊れるハード・ロックというのはたぶんあんまりないので、それも彼らの独自性というか、オリジナリティであると思う。

べつにダンス・ビートでやってるわけではないけれども、もともとジミー・ペイジという人が弾くギターのリフはどこかファンキーであり、「踊るギタリスト」とわたしは密かに呼んでいる。彼が延々と繰り返すギター・リフを聴いているうちに、まるで催眠術みたいについついこちらも踊らされてしまう。

本作は、もともとアルバム用として8曲がレコーディングされたが、収録時間が当時のレコードの容量を超えていたため、どうせならと過去のアルバム制作時にお蔵入りになっていたアウトテイクを7曲追加し、2枚組LPとしてリリースされた。

ビートルズの『ホワイト・アルバム』やローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』、ボブ・ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』など、2枚組LPとしてリリースされたアルバムは、そのアーティストが創作意欲旺盛な絶頂期である場合が多く、キャリアの頂点となる名盤となることが多い。

本作はもともと意図して作られた2枚組ではなかったにしろ、その内容はやはり当時の2枚組アルバムに共通する、そのバンドの王道スタイルだけではない、意外な側面や実験的な試みなど、幅広い楽曲が収録されている。

いつものようなゴリゴリの全力ハード・ロックから、ツェッペリンらしからぬポップな歌メロの曲や、ストリングスやホーンを入れた壮大な曲、異様なブルースや幻想的なカントリー風や不思議なピアノ・ブギ、ニール・ヤングもどきやブラック・サバス崩しなどなど、実験精神とチャレンジ精神旺盛でゴチャついた魅力の溢れるものとなっている。

本作は1975年2月にリリースされ、全米1位、全英1位、日本のオリコン総合チャート13位と、世界的なヒットとなった。米国では予約注文だけで100万枚を超えた初めてのレコードとなり、800万枚以上を売り上げた。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 カスタード・パイ
2 流浪の民
3 死にかけて

SIDE B

1 聖なる館
2 トランプルド・アンダー・フット
3 カシミール

SIDE C

1 イン・ザ・ライト
2 ブロン・イ・アー
3 ダウン・バイ・ザ・シーサイド
4 テン・イヤーズ・ゴーン

SIDE D

1 夜間飛行
2 ワントン・ソング
3 ブギー・ウィズ・ステュー
4 黒い田舎の女
5 シック・アゲイン

うーん、SIDE Bが楽しいな、やっぱり。

こんなことを言うときっと怒られるだろうが、もともとゴリゴリのハード・ロックとオラオラのツェッペリンが苦手なわたしは、本作に収録されているフニャフニャのポップな「聖なる館」や、バキバキのファンキーな「トランプルド・アンダー・フット」や、ギンギラの大聖堂のような「カシミール」なんかが面白く思える。他にも、

もちろん冒頭を飾る「カスタード・パイ」に代表される、いかにもツェッペリンらしい、リフでグイグイ押す、歌メロがテキトーな(失礼)、ファンキー・ハード・ロックはそもそも最高だ。他にも薄気味悪いほど牧歌的な「ダウン・バイ・ザ・シーサイド」や、イアン・スチュワートとのジャム「ブギー・ウィズ・ステュー」も面白い。

↓ シングル・カットされた「トランプルド・アンダー・フット」。踊れるハード・ロックの代表格だ。それにしても、ギターのこういうリフを延々と引き続けるのって辛かったりしないもんなのかな。

↓ 前作『聖なる館』のタイトル曲だったのにお蔵入りになったのは、きっとアルバムの印象を大きく変えてしまうぐらいポップ過ぎたからだと想像する。しかし残念ながら、わたしはこの曲が大好きだ。

(Goro)

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