Killing Joke
“Killing Joke” (1980)
P.I.L.、ギャング・オブ・フォー、ジョイ・ディヴィジョン、アダム・アンド・ジ・アンツなど、ポスト・パンクと呼ばれた英国のバンドには、パンクの攻撃性をより先鋭的にしつつ、ダンス・ミュージックの要素を取り入れたものが主流だったように思う。
それは単純に、その少し前に英国で流行していたのはパンク・ロックとディスコ・ミュージックに他ならず、意識的か無意識的かはわからないけれども、その影響があるのではないかと思うのだ。
その意味で、パンクの攻撃性をより過激にしつつ、ダンス・ミュージックの要素を最も巧みに融合させたのがこのキリング・ジョークだったように思う。
この時代にはポスト・パンクの個性的な名盤がいろいろあるけれども、わたしがいちばん好きなのが本作である。独創的で、刺激的で、シビれるほどカッコいい。最優秀ポスト・パンク賞を授与したいぐらいである。
キリング・ジョークはヴォーカル&キーボードのジャズ・コールマンとドラムのポール・ファーガソンが1978年にロンドンで結成し、翌年にギターとベースが加入し、EP「ターン・トゥ・レッド」でデビューした。
本作は1980年10月にリリースされた彼らの1stアルバムである。コールマンとファーガソンが歌詞を書き、作曲は全員の名前がクレジットされている。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 レクイエム
2 ウォーダンス
3 トゥモロウズ・ワールド
4 ブラッドスポート
SIDE B
1 ザ・ウェイト
2 コンプリケーションズ
3 S.O.36
4 プリミティヴ
不穏なシンセ、ノイズを撒き散らすギター、リズム隊の攻撃的なビート、ハイテンションなヴォーカル、そのすべてがうまい具合によく馴染み、よく踊るのである。
歌詞は、死や終末、反戦・反権力、社会の不条理、都市の冷酷と若者の疎外感など、とにかく不満だらけで怒りまくっている。
ヴォーカルのジャズ・コールマンは「古代の部族儀式のような音楽を、核の脅威を背負いながら作りたかった」(サウンズ誌インタビュー 1980年)と、読んだだけではよくわからないだろうが、聴けばなんとなくわかるようなことを語っている。
アルバムは全英39位どまりで評価も賛否両論だったが、しかし後の世代への影響は大きく、インダストリアルの先駆的バンドと評価され、90年代のオルタナティヴ・ロックはもちろん、ヘヴィ・メタルやヒップ・ホップにまでその影響は及んでいる。フー・ファイターズのデイヴ・グロールは本作をお気に入りのアルバムのひとつに挙げ、共演も果たし、「世界で一番怖くてクールなバンド」と発言している。
日本では当時からあまり注目はされておらず、国内盤が2000年代に初めて発売された折にほんのちょっとだけ注目を集めたらしいが、もっともっと評価されていいバンドだと思う。
↓ シングル・カットされた「ウォーダンス」。全英34位、米ダンス・チャートの50位まで上昇した、初期の代表曲。
↓ メタリカがカバーしたことでも知られる初期の代表曲「ザ・ウェイト」。ギターとリズム隊の疾走感が陶酔的。
(Goro)