多文化雑居都市N.Y.の夜と昼 〜ジョー・ジャクソン『ナイト・アンド・デイ』(1982)【最強ロック名盤500】#299

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【最強ロック名盤500】#299
Joe Jackson
“Night and Day” (1982)

イングランドのスタッフォードシャー州で生まれたジョー・ジャクソンは、16歳の頃からバーでピアノを弾き始め、高校在学中に音楽奨学金を得ると、ロンドンの王立音楽院へと進学した。

音楽院ではクラシック音楽と作曲を学んだが、ロックとジャズにも傾倒し、パブ・ロックのバンドにキーボード奏者として参加した。

A&Mと契約すると、新たにジョー・ジャクソン・バンドを結成し、1978年にパブ・ロック〜ニュー・ウェイヴ風のアルバム『ルック・シャープ』でデビューした。

その後は一作ごとにスタイルを変え、ジャズ、スカ、レゲエ、クラシック、ラテンなど、ジャンルを横断する幅広い作品を発表している。本人はどうやら自分をロック・アーティストだとは思っていないらしい。1999年には「交響曲第1番」という全4楽章、43分という本格的な現代音楽作品も発表している。

本作はそんな彼の5枚目のアルバムで、1982年6月にリリースされた。

ジョー・ジャクソンが当時移住したばかりのニューヨーク市に触発され、多様なカルチャーや、人種・ジェンダー問題、都会の孤独と自由、昼と夜の対比といったテーマを、ギターを使わない、ピアノ中心のバンドで、スタイリッシュかつエレガントに表現している。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 アナザー・ワールド
2 チャイナタウン
3 テレビ・エイジ
4 ターゲット
5 ステッピン・アウト

SIDE B

1 危険な関係
2 癌に気をつけろ
3 リアル・メン
4 スローな曲をかけてくれ

シンセサイザーも駆使しながら、しかし決して安っぽいサウンドになっていないのはこの人のアレンジの才能だろう。ピアノを中心とした、耳が洗われるような清新な響きのサウンドを生み出している。

ただの気取ったAORみたいなものならわたしは興味がないが、スタイリッシュでありながらも、しかしどこまでもロック的な前傾姿勢を失わないところがジョー・ジャクソンの魅力である。都会的でエレガントなスタイルでも、その芯はやはりシニカルかつ攻撃的であり、怒れる若者の表現なのだ。

シングル・カットされたA5「ステッピン・アウト」は全英6位、全米6位という、ジャクソンにとって最大のヒットとなった。ローランドのリズム・マシンとピアノという編成が、当時の日本のテクノ・ポップの流行に共鳴し、また都会の夜をイメージした洗練されたサウンドはシティ・ポップやAOR、フュージョンのリスナーにも支持されたという。日本でもTV番組などでたまに使われているのを聴くことがあるので、イントロの部分なんかは聴けば思い出す人も多いのではないかと思う。

他にもB1「危険な関係」、B3「リアル・メン」もシングル・ヒットし、アルバムは全英3位、全米4位とキャリア最大のヒットを記録した。

↓ 世界的なヒットとなった代表曲「ステッピン・アウト」。

↓ 全米18位とヒットしたミディアム・バラード「危険な関係」。

(Goro)

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