ジミー・リード『アイム・ジミー・リード』(1958)【最強ロック名盤500】#64

アイム・ジミー・リード/ジャスト・ジミー・リード

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#64
Jimmy Reed
“I’m Jimmy Reed” (1958)

米ミシシッピ州生まれのジミー・リードは、第二次世界大戦で海軍に徴兵されて従軍したのち、食肉包装工場で働き、やがてストリートで演奏するなどのバンド活動を行い、1953年に28歳でシカゴのヴィージェイ・レコードからデビューした。

1955年にリリースした3枚目のシングル「ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ゴー」が米R&Bチャート5位のヒットとなってブレイクすると、1961年までシングルヒットを連発し、当時、商業的に最も成功したブルースマンとなった。

本作は1953年から58年にかけて放ったシングル12曲をまとめた、ジミー・リードの1stアルバムである。カッコ内は米R&Bシングルチャートの最高順位だ。

SIDE A

1 Honest I Do(4位)
2 Go On To School
3 My First Plea
4 Boogie In The Dark
5 You Got Me Crying
6 Ain’t That Lovin’ You Baby(3位)

SIDE B

1 You Got Me Dizzy(3位)
2 Little Rain(7位)
3 Can’t Stand To See You Go(10位)
4 Roll And Rhumba
5 You’re Something Else
6 You Don’t Have To Go(5位)

同じシカゴのライバル・レーベル、チェスレコードのブルースマンたち、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどの豪快でパワフルなブルースに比べると、ジミー・リードのブルースはいかにも弱々しく、のろのろしていて、ベースレスの軽いサウンドとだらしない歌い方、そしてやけに高音部でばかり吹くキンキンしたハーモニカが特徴である。わたしは最初に聴いたときにはまったくピンと来なかった。これのなにがいいのか、と思ったものだ。

チェスレコードの面々の、バンド編成による最新鋭のブルースに比べるといかにも素朴でスピード感もキレもないし、例えて言うならロックとフォークぐらいの違いを感じたものだ。しかしこの素朴なブルースが広く支持され、ヒット連発となったのだから、当時のリスナーの好みにはこちらの方がハマっていたのだろう。

A1「オネスト・アイ・ドゥ」は代表曲で、わたしもストーンズのカバーでよく知っていた。B2の「リトル・レイン」もストーンズが『ブルー&ロンサム』でカバーした曲だ。ロック風のA6とバラード風のB6も多くのカバーが存在するジミー・リードの代表曲だ。

しかし不思議なもので、繰り返し聴くうちにわたしも次第にこの素朴なブルースの意外に深い味わいや、バックの軽いサウンドもなんとなく気に入ってきたものだ。

マディやウルフはどちらかというと週末の夜にビールでも呑みながら大音量でガッツリ聴きたい感じだが、ジミー・リードなら、遅めに起きた休日の午前中に玉ねぎスープとトーストでも食べながら聴くのがちょうどいい感じである。

ノスタルジックでときに優しさも感じるジミー・リードの楽曲はなんでもない日常に溶け込みやすい印象で、当時のリスナーたちがラジオから流れてくる彼の歌声を愛したのもよくわかる気がするのである。


↓ ストーンズのカバーでも知られる、R&Bチャート4位の代表曲「オネスト・アイ・ドゥ」。

Honest I Do

↓ 本作の中では最もロック風で多くのカバーが存在する、R&Bチャート3位の代表曲「エイント・ザット・ラヴィン・ユー・ベイビー」。

Ain't That Lovin' You Baby

(Goro)