⭐️⭐️⭐️
Iggy Pop
“The Idiot” (1977)
「えっ、思ってたのと違う!」というのが最初の印象だった。
あのストゥージズの狂暴極まりないヴォーカリスト、イギー・ポップのソロ第一作である。野獣が腐肉を食い散らかすようなアルバムになるかと思いきや、これである。まるでクラフトワークをバックバンドに従えて、金縁メガネをかけ、七三分けしたイギーが高級ワインのボトルを片手に、ときどきラッパ飲みしながら歌っているようなアルバムである。
1974年2月にストゥージズを解散し、薬物依存の治療施設に自ら入るなどして健康を取り戻しつつあったイギーは、当時彼の面倒をよくみてくれた「守護者」デヴィッド・ボウイのツアーに同行し、プロフェッショナルなアーティストの仕事ぶりを学んだという。その後、ベルリンへ移住してボウイとマンションで共同生活をしながら薬物依存の治療を続け、ボウイがその当時ハマっていたクラウト・ロックや最先端のエレクトロニック・サウンドに興味を持ち、吸収していったという。
本作はそんな時期に、デヴィッド・ボウイがプロデュースを務めて制作された、イギー・ポップのソロ第一作であり、彼にとって復活を賭けた作品だった。
ボウイは『ロウ』を始めとするブライアン・イーノとの共同作業に取り掛かった頃であり、本作はその『ロウ』のミュージシャンや制作スタッフをそのまま使った、謂わゆる彼の「ベルリン三部作」への助走のような作品となった。
楽曲はすべて、イギーとボウイの共作で書かれた。本作は1977年3月にリリースされ、全米72位、全英30位と、ストゥージズ時代は全米106位、全英44位が最高位だったイギーにとっては、大成功の部類に入る成績だった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 シスター・ミッドナイト
2 ナイトクラビング
3 ファンタイム
4 ベイビー
5 チャイナ・ガール
SIDE B
1 ダム・ダム・ボーイズ
2 タイニー・ガールズ
3 マス・プロダクション
まるでニュー・ウェイヴの先取りのような、無機質なエレクトロニック・サウンドに最初こそ戸惑ったものの、繰り返し聴くうちに、イギーのクールなバリトン・ヴォイスとの相性が意外に良かったり、ノイズのカオスが背後に効果的に聴こえたり、これはこれでなかなか尖った、イギーのカッコよさをまた別の形で引き出したアルバムだと思えるようになった。わたしは気に入ってときどき聴くようになり、人気のない夜の道を歩きながらイヤホンで聴いたりすると、よりしっくりとハマった。
復活を果たすべく闇の世界から帰還した放蕩息子イギーと、その守護神デヴィッド・ボウイとの挑戦的な試みが意外な形で成功を収めた傑作である。
↓ 後にボウイが歌ってヒットさせた「チャイナ・ガール」。イギーのヴォーカルはたぶんボウイのモノマネをしていると思われる。
↓ 多くのカバーやサンプリングなどを生んだ「ナイトクラビング」。
(Goro)