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Howlin’ Wolf
“Howlin’ Wolf” (1962)
1960〜62年にかけて発表したシングル12曲を集めて、1962年1月にリリースされたハウリン・ウルフの2ndアルバムだ。1st『モーニン・イン・ザ・ムーンライト』はこの名盤500でもすでに取り上げたが、本作はさらに音楽的な幅が広がった充実作だ。
シングルの寄せ集めなので曲によって録音時期もバックのメンバーも違うはずなのだが、にも関わらずそれぞれの楽曲でバンドとしての一体感やグルーヴが感じられる素晴らしい出来だ。なにより、ウルフ先生の右腕となった、ヒューバート・サムリンのクールで切れ味鋭いギターが素晴らしい。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 シェイク・フォー・ミー
2 ザ・レッド・ルースター
3 ユール・ビー・マイン
4 フーズ・ビーン・トーキン
5 ワン・ダン・ドゥードゥル
6 リトル・ベイビー
SIDE B
1 スプーンフル
2 ゴーイン・ダウン・スロウ
3 ダウン・イン・ザ・ボトム
4 バック・ドア・マン
5 ハウリン・フォー・マイ・ベイビー
6 テル・ミー
ちなみにどのシングルもチャートには入っていない。
A2はローリング・ストーンズが「リトル・レッド・ルースター」としてカバーし、1964年に全英シングルチャートの1位に輝いた (なんて時代だ)。
わたしも最初はストーンズのバージョンでこの曲を知り、オリジナルはその後で聴いた。
ストーンズも、あの若さでよくあんな渋い演奏をしたもんだと感心するのだけど、しかしこのウルフ先生のオリジナルの大迫力にはかなわない。
ルースターは雄鶏のことだけど、ウルフ先生の歌で聴くと見上げるような巨鳥がのっしのっしと歩いてくるようだ。
A5「ワン・ダン・ドゥードゥル」は1966年にココ・テイラーがカバーし、米R&Bチャートで5位に達するヒットとなった。
A6はリトル・ウォルターが「マイ・ベイブ」のタイトルでヒットさせた曲のカバーだ。
そしてB4「バック・ドア・マン」はドアーズのカバーでもよく知られている。
B1「スプーンフル」はウルフ先生の代表曲に数えられる名曲だが、わたしが最初にこの曲を聴いたのはイギリスの有名バンドによるカバーで、それはもう牛の歩みのようにのろのろしたテンポで、そのうえなにが面白いんだかわからない長い長いインプロビゼーションを含んだ16分にも及ぶもので、これにげんなりしたせいでわたしはハウリン・ウルフを聴くのが20年遅れてしまったのだった。しかし後にウルフ先生のオリジナルを聴いて、そのスウィング感あふれるグルーヴとヒューバート・サムリンの切れ味鋭いギターに「こんなカッコいい曲だったのか!」と目を開かされたものだった。以来わたしは、ストーンズは別として、白人のブルース・バンドはあまり信用してはいけないと肝に銘じている。
そもそも若い頃のわたしはあまりウルフ先生の良さがわからなかった。ダミ声のインパクトが強すぎてその他の要素が聴こえてなかったに違いない。
今はそのダミ声のカッコ良さはもちろんのこと、彼とバンドならではの独特のキレのあるスウィングするグルーヴが特に気に入っている。
年をとってからやっとその良さに気づいたのは鈍感なわたしにはよくあることだけれども、今はこの独自のスタイルを貫き通したいつも大真面目な武道家みたいなウルフ先生がカッコよくてたまらないのだ。
↓ 白人ブルースバンドを信用してはいけないことをわたしに教えてくれた「スプーンフル」。
↓ ストーンズのカバーで有名な「ザ・レッド・ルースター」。
ハウリン・ウルフ『モーニン・イン・ザ・ムーンライト』の記事はこちら
(Goro)