1975
1975年は、明らかにロック・シーンの潮目が変わった年だ。
当時、ローリング・ストーン誌のライターだったジョン・ランドゥがこの年に書いた一文はあまりにも有名だ。「僕はロックンロールの未来を見た。その名はブルース・スプリングスティーン」。しかしその他にも、ロックンロールの未来たちは次々に頭角を現してきていた。
アメリカ生まれの本格的なハード・ロック・バンドだったエアロスミスもそうだし、世界中の子供たちをロックに目覚めさせたキッスもそうだ。また、オーストラリアからは野性味あふれる、天然由来の新たなハード・ロックも登場した。
さらにニューヨークでは女王によってパンクの扉が開かれ、ロンドンのパブではパンクへとつながる導火線に火が放たれた。
まさにロックンロールの燃え上がる未来が今まさに始まろうとしている瞬間だった。
Bruce Springsteen – Born to Run
それまでのロックンロールのすべてを包括していながら、それまでの誰とも違う、これ以上は無いほど熱くて感動的でクールなロックンローラー。
閉塞する状況を打破するような勢いと力強さに溢れた、新たなアメリカのロックンロール・ヒーロー像の誕生だった。
Aerosmith – Sweet Emotion
70年代のアメリカン・ハード・ロックを代表するバンドと言えばやはりエアロスミスだ。シビれるようなギターリフを中心とした彼らのヘヴィなサウンドとソングライティングはその完成度においてズバ抜けていた。この曲は3rdアルバム『闇夜のヘビィ・ロック』からのシングルで、彼らにとって初の全米Top40入りを果たし、代表曲となった名曲だ。
Kiss – Rock And Roll All Nite
キッスはロックンロール史上最高のエンターテイナーだ。あの唯一無比のヴィジュアルとわかりやすいハード・ロックンロールで、世界中のクソガキたちを夢中にさせ、ロック好きへと育てた功績は大きい。この曲は彼らの代表曲。
ZZ Top – Tush
米テキサス州出身のブルース・ロック・バンド。60年代の末ごろからニセモノ臭いブルース・ロック・バンドがうんざりするほど出てきてそして消えて行った後で、やっと本物の土と汗と火薬が入り混じったような饐えた匂いのする彼らの激しいサウンドは、ブルースの未来のように響き渡った。この曲は全米20位と、彼らにとって初のヒットとなった代表曲だ。
Bob Dylan – Tangled Up in Blue
75年発表のアルバム『血の轍(Blood on the Tracks)』は、ディランの最高傑作に挙げられることも多い名盤だ。この曲はそのオープニング・トラックで、全米31位のヒットとなった。アコギの響きも美しい、70年代のディランを代表する名曲。
Patti Smith – Gloria
“パンクの女王”パティ・スミスの1stアルバム『ホーセス』の冒頭を飾る曲。ゼムのカバーだが、強い意志と熱い魂と限りない自由を感じさせるような衝撃的なヴォーカルが凄い。ニューヨーク・パンクの扉はこの女王によって開かれたのだ。
Dr. Feelgood – She does it right
ロンドンのパブで活動していた、パブ・ロックの筆頭がこのドクター・フィールグッドで、彼らの1stアルバムの冒頭を飾る曲だ。今や生きた伝説と化した初代ギタリスト、ウィルコ・ジョンソンの異様にキレるカッティング・ギターを中心とした、彼らのアグレッシヴなロックンロールが、パンクに繋がる導火線に火を放ったと言えるだろう。
AC/DC – It’s a Long Way to the Top (If You Wanna Rock ‘n’ Roll)
オーストラリアのバンドAC/DCの世界デビュー・アルバム『ハイ・ヴォルテージ』のオープニング・トラック。まるで永遠に終わらないロックンロールを聴いているような感覚に陥る催眠的なギター・リフに、いってもたってもいられないほどバカになれる、天然由来のロックンロールだ。
10cc – I’m Not in Love
イギリスでよく名が知られたスタジオ・ミュージシャンだった4人が1972年に結成したのがこの10ccだ。
彼らの実験的な作風の3rdアルバム『オリジナル・サウンドトラック』からのシングルで、全英1位、全米2位の大ヒットとなり、彼らの名を一躍世界に知らしめた。ユニゾンのコーラスを多重録音して作られた、優美極まる異次元の音世界だ。
Queen – Bohemian Rhapsody
わたしは”変態”という言葉を良い意味でしか使わないが、この曲こそロック史上最も変態な1曲と言っても過言ではないだろう。最初にこの型破りな大曲を聴いたときは、あまりの変態さに、衝撃と混乱と昂奮とニヤニヤが止まらなかったほどだ。誰もが知る、クイーンの最高傑作。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1975【ロックンロールの未来たち】Greatest 10 Songs
ぜひお楽しみください。
(by goro)