はじめてのはっぴいえんど【必聴名曲5選】5 HAPPY END Songs to Listen to First

トウキョウ・ロック・ビギニングス「はっぴいえんど」 - わたしと明日のおしゃれなカンケイ

岡林信康の名曲ベストテンの記事でわたしは彼を「日本語ロックの開祖のひとり」と書いたが、それを支えたのがはっぴいえんどだった。

1970年に岡林の2ndアルバム『見る前に跳べ』に参加したはっぴいえんどは、岡林のツアーにも同行し、まるでボブ・ディランとザ・バンドのように、岡林がフォークからロックへと転向するのを手伝った。そして同時期に自分たちの1stアルバムもリリースした。

当時はまだ日本のロックの黎明期であり、日本のロックバンドたちのあいだでも「ロックは英語で歌うべき派」「日本語で歌うべき派」が対立していた頃であったが、はっぴいえんどはその議論に終止符を打つように、独創的な日本語ロックを創造してみせた。

1960年代末、日本ではブリティッシュ・ロックの人気が高かった時代に「やっぱりロックをやるならアメリカを手本にしないと」と考え、バッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプを手本にして、独自のサウンドと日本語ロックのスタイルを模索した。
ヴォーカルの大瀧詠一は日本語でロックを歌う方法を編み出し、鈴木茂はロックの弾き方でギターを弾いた。そしてこのバンドの要だとわたしが思っているのはベースの細野晴臣とドラムの松本隆というリズム隊で、この2人でなければ本物のロック・サウンドにはならなかった気がする。特に作詞を担当した松本は、歌詞も含めて日本語ロックを完成させることに大きな貢献を果たした。

そして解散後も個々のメンバーによって、ポップス、歌謡曲、テクノと、日本のポピュラー・ミュージックに広範囲に影響を与えたグループでもある。

でも彼らの作風は、そんなに偉そうなものでも肩の凝るものでもない。
クールでカッコいい作風にはユーモアも多く含み、親しみやすい楽曲がほとんどだ。
名人の集まりでありながら、テクニックを見せびらかすようなことはしないし、アートを気取るようなところもない。しかしその楽曲はクールで、歌詞は心に響き、リアルで美しい風景を現出させる。

以下はわたしが愛する、最初に聴くべきはっぴいえんどの至極の名曲5選です。

12月の雨の日(1970)
作詞:松本隆 作曲:大滝詠一

はっぴいえんどが最初に作った曲で、彼らのデビュー・シングルとなった。
雨上がりの街で、特に何かが起こるわけでもなく「流れる人波を、僕は見ている」と歌うだけの曲なのに、なにか時代のリアリティを象徴するようなすごく印象的な歌詞だったことを憶えている。
わたしが最初に聴いたのが71年の中津川フォークジャンボリーのオムニバス・ライヴ盤で、他はみんな弾き語り中心のフォーク・スタイルなのに、はっぴいえんどだけものすごい音圧のロックなのが強烈で、大好きになった曲だった。

12月の雨の日

春よ来い(1970)
作詞:松本隆 作曲:大滝詠一

1stアルバム『はっぴいえんど』のオープニングを飾る曲。
アグレッシヴな洋楽ロックのサウンドに乗せて、「お正月と言えばこたつを囲んで、お雑煮を食べながらカルタをしたものです」とあえてものすごく日本的な情景から始まることに「あくまで日本語で、日本のロックを創造する!」という気概が感じられたものだ。
そしてまた当時のフォークとも違う、ちゃんとしたロックのサウンドになっているし、これを激しく歌いこなした大瀧詠一の見事なヴォーカルにもシビれる。

春よ来い

風をあつめて(1971)
作詞:松本隆 作曲:細野晴臣

2ndアルバム『風街ろまん』収録で、作曲者の細野晴臣がヴォーカルも取っている。
シングル・リリースはされていないが、『喫茶ロック』というコンピ・シリーズの代表的な楽曲として再評価された2001年以降には映画やCMなどに使われるようになり、多くのカバーも生み、たぶんはっぴいえんどではいちばん知られた曲となっている。わたしもこの曲がいちばん好きだ。

【高音質】はっぴいえんど 風をあつめて

花いちもんめ(1971)
作詞:松本隆 作曲:鈴木茂

2ndアルバム『風街ろまん』からのシングルで、メンバーから薦められてギターの鈴木茂が初めて書いた曲。ヴォーカルも鈴木がとっている。
はっぴいえんどらしい、失われゆくノスタルジックな街の風景を、傍観者のように距離を置いて眺めている歌だけど、リフレインの「みんな妙に、怒りっぽいみたい」という歌詞がこの時代のピリピリとした空気を伝えているようで印象的だ。

花いちもんめ

さよならアメリカ さよならニッポン(1973)
作詞:はっぴいえんど 作曲:はっぴいえんど&ヴァン・ダイク・パークス

すでに解散が決まっていたにも関わらず、ひょんなことから米ロサンゼルスで録音されることになった3rd『HAPPY END』の、文字通りラストを飾る曲。
はっぴいえんどがレコーディングしていたスタジオにふらりと現れた鬼才ミュージシャン、ヴァン・ダイク・パークスがプロデュースをした1曲だ。
解散が決まっていてメンバーもやる気を失っていたレコーディングだったせいもあり、あまりパッとしないアルバムの中で、この妙な曲だけが印象的だった。
実験的でありながらユーモラスでもあり、美しい万華鏡のように煌めくようなサウンドは、はっぴいえんどの最後の曲にふさわしい楽曲と言えるかもしれない。

はっぴいえんど〈さよならアメリカ さよならニッポン〉

入門用のアルバムとしてはベスト盤『CITY』があるけれども、まあやはり日本語ロックの歴史的名盤『風街ろまん』のほうもお薦めしたい。

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