Elvis Presley
Suspicious Minds (1969)
1963年以降、エルヴィスのレコード・セールスは不調を極めた。それはビートルズに始まるブリティッシュ・インヴェイジョンやボブ・ディランなどの新しいロックの波によって、彼のロックンロールは過去のスタイルになってしまったことが大きな原因でもあった。
また、年3本ペースという大量の映画出演の契約に縛られ、あまり良い出来とは言えないミュージカル映画を量産し、興行成績も振るわず、彼の人気と評価をじわじわと落としていく要因のひとつとなっていた。
そんな彼が音楽にカムバックしたのが1968年12月に放映されたTVの特別番組『ELVIS』であり、革ジャンに身を包み、7年ぶりのライヴ・パフォーマンスを披露し、視聴率42%と大きな反響を得た。
その勢いに乗って、翌年の夏にリリースされたのがこの曲である。
エルヴィスにとって7年ぶりとなる全米1位の大ヒットとなり、起死回生の復活となった。
“Suspicious Minds”とは、疑い深い心、疑心暗鬼、不信感、みたいな意味だそうだ。シンガー・ソングライターのマーク・ジェイムスが前年にシングルとしてリリースした曲のカバーである。
今、これを書きながら75年のアルバム『エルヴィス・トゥデイ』を聴いているが、わたしはやっぱりこの人の、色気の塊みたいな声が好きだ。なにを歌っても名曲に聴こえてしまう気がする。
わたしがもしオネエなら、あの声だけで抱かれたいと思ってしまうだろう。
いや違うか、もしオネエならじゃなくて、もし女なら、だな。
↓ 後年製作された公式ミュージック・ビデオ。
↓ 作者であるマーク・ジェイムスのオリジナル。このシングルはまったく売れなかったらしい。
(Goro)