ダイナソーJr.の登場は衝撃的だった。1980年代末のことである。
疾走感あふれるビートに眠たそうなヴォーカル、ポップなメロディと雷鳴のような轟音ギター、殺伐とした音響にポジティヴなアティテュードというあり得ない組み合わせが、パンク以来の刺激でド直球のロックンロールを誕生させた。
90年代のオルタナティヴ・ロックの流行は、このダイナソーJr.の影響が相当大きかったと思う。
あらためて聴いても、この凄まじいギターは唯一無比だ。
襲い掛かり方が尋常じゃないし、斬り裂き方はまるで腹を空かした肉食竜だ。噛みつき、のたうち、暴れ回る、トチ狂った恐竜のようだ。
その明るく獰猛な音楽は、あの生気のない言動と冴えない見た目のJ・マスシスのイメージとのギャップが凄いのもまた面白かった。彼はわたしの最高のギター・ヒーローのひとりだ。
以下は、わたしが愛するダイナソーJr.の至極の名曲ベストテンです。
Almost Ready
1997年に一度解散したダイナソーJr.だったが、10年後の2007年にオリジナル・メンバーで再結成。発表したアルバムが『ビヨンド(Beyond)』で、この曲はそのオープニング・トラックだ。
びっくりするほど30年前と何も変わらない、J、ルー、マーフによるダイナソー・サウンドが嬉しい。
Thumb
メジャー移籍第1弾『グリーン・マインド(Green Mind)』収録曲。ダイナソーJr.には、こういうスロー・テンポのメランコリックな曲にも佳曲が多い。
このアルバムだけなぜか音がショボいのが残念だけれど。
Feel the Pain
94年のアルバム『ウィズアウト・ア・サウンド(Without a Sound)』からのシングルで、米モダン・ロック・チャート4位と、彼らとしては最も売れたシングルのひとつに数えられる。
「痛みを感じる」というタイトルの、彼らにしてはやや内省的でメロウな曲になっているが、この時期にJ・マスシスの父親が亡くなったことがアルバム全体に影を落としているそうだ。
Start Choppin
ダイナソーJr.絶頂期の名盤『ホエア・ユー・ビーン(Where You Been)』は、音質も劇的に改善され、迫力満点破壊力抜群のリアル・ダイナソー・ワールドを堪能できる。
この曲はアルバムからの2ndシングルとなり、米モダン・ロック・チャート3位、全英20位と、どちらもダイナソーJr.の全キャリアのシングル最高位となった。
Tiny
2016年に発表された、現時点(2020年6月)での最新アルバム『ギヴ・ア・グリンプス・オブ・ホワット・ヤー・ノット(Give a Glimpse of What Yer Not)』からのシングル。
1度聴いただけで口づさめるポップなメロディとヘヴィなサウンド、のたうたまわる恐竜のようなギター・ソロ、豪快で疾走感あふれる曲だ。
30年経っても自分たちのスタイルを変えないって、素晴らしいことだ。
Whatever’s Cool with Me
メジャー移籍作『グリーン・マインド』でブレイクした後に、続けざまに発表されたEPのタイトル曲。
疾走感と清々しい破壊力でどんなときでもポジティヴな気分にさせてくれた、90年代のロックンロールだった。
Get Me
1992年にアルバム『ホエア・ユー・ビーン』よりひと足早く発表された先行シングル。
J・マスシスの真骨頂、激しく泣き叫ぶようなギター・ソロが聴ける、スロー・ナンバーの名曲。特にエンディングのギター・ソロにグッと来てしまう。
Little Fury Things
2ndアルバム『ユーアー・リヴィング・オール・オーヴァー・ミー(You’re Living All Over Me)』のオープニング・トラック。
ポップな歌メロと歪んだ轟音ギターのハードコア・サウンドの融合というダイナソーJr.のスタイルが確立した記念碑的な曲。これをソニック・ユースのメンバーらが絶賛したことから、脚光を浴びることになった。
音質や楽曲の完成度はこの後のほうがより高くなっていくが、圧倒的な破壊力は今聴いても凄まじい。
The Wagon
メジャー移籍作『グリーン・マインド(Green Mind)』のオープニングにも収録された、先行シングル。
ダイナソーJr.の名前を轟かせ、90年代ロックの幕開けを告げた鮮烈なロックンロールだった。
当時は毎日のように聴いて、パワーを貰ったものだった。
Freak Scene
3rdアルバム『BUG』のオープニング・トラック。
フェンダー・ジャズマスターの安っぽい音のイントロで始まり、眠そうなJ・マスシスがもごもごと歌い出すポップなメロディ、疾走する轟音ギター、やがてとち狂ってのたうち回った挙句に宙に放り投げられるようなギター・ソロまで、すべてがもうたまらない。
以上、ダイナソーJr.【名曲ベストテン】 でした。
(by goro)