デッド・ケネディーズ/ホリデイ・イン・カンボジア (1980)

【80年代パンクの名曲】
Dead Kennedys
Holiday in Cambodia (1980)

米サンフランシスコのパンク・バンド、デッド・ケネディーズが1980年5月にリリースした2ndシングルだ。

デッド・ケネディーズは社会派ハードコア・パンクの草分けとなったバンドだが、ポップ要素もあるので、もの凄く速いけれどもメロディアスで、複雑に展開したりするところが独特だ。

この曲は、安全で特権的な立場にありながら、薄っぺらい社会正義を語るアメリカのリベラルな大学生たちの偽善を冷笑する内容の歌だ。

当時のカンボジアはポル・ポト派の恐怖政治によって、知識人や都市住民を中心に200万人もの大量虐殺が行なわれた。

「1〜2年大学に通っただけで、すべてを知った気になってるお前ら、カンボジアに行って本物の地獄を見て来い!」と歌う、なんとも痛烈な曲である。思わず喝采を送りたくなる。

国や時代が違ってもそういう「見せかけだけの意識の高さ」で自分に酔っている連中はどこにでもわいてくるものだ。

日本のような平和で安全で優しい国で「戦争反対」などとプラカードを掲げてデモ行進をしているのを見ると、それはロシアやイスラエルでやってこい、と言いたくもなる。

歌詞を書いたジェロ・ビアフラはこう語っている。「マリファナを吸って、チョムスキーを読んだくらいで革命家気取りの甘ったれどもに向けたんだ」(インタビュー・マガジン 1983年)

この曲は4ヶ月後にリリースされた1stアルバム『暗殺』にも収録された。

アルバムの原題は”Fresh Fruit for Rotting Vegetables”(腐った野菜に替わる新鮮な果物)だ。なんだろう、『古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう』みたいなことか。

それにしても、日本の発売元のトイズファクトリーは、デッド・ケネディーズで『暗殺』なんて邦題をよくつけたもんだ。怖いものなしの時代だったのだろうか。

もし今の世の中だったら、バンド名も、邦題も、曲の歌詞も、ジャケット写真も、なにもかもが大炎上に違いない。

(Goro)