⭐️⭐️⭐️⭐️
Bohemian Rhapsody
監督:ブライアン・シンガー
主演:ラミ・マレック
この映画の大ヒットにはびっくりしたなあ。
日本では興行収入130億円、『ジュラシック・パーク』を抜いて歴代16位という信じられないほどの大ヒットになった。
日本中にこんなにもクイーンを好きな人がいたのか、とわたしは呆然とするばかりだった。
わたしの友人たちも続々と映画館に観に行ったことをSNSで知り、もう何十年来の付き合いの彼らの音楽の好みはよく知っているつもりだったけれど、クイーンが好きだったなんて初耳だぞ!?、と焦ったものだった。
かく言うわたしは、クイーンの有名曲のいくつかはもちろん知っているし、好きな曲もあるけれど、CDもレコードも1枚も持っていないし、この先もクイーンの音楽をこれ以上知ることもなく死んでいくはずだった。
しかしそんなわたしも、突然沸き起こったクイーン・ブームの勢いに圧倒され、後ろからケツを蹴られるようにして、映画館に観に行ったのだった。
映画はまあ面白く観れたし、好きなクイーンの曲も少し増えた。
音楽伝記映画というのは、何十年という実際の時間を2時間の作品に圧縮するわけなので、どこに焦点を当てて、どこを端折るかという選択が、それぞれの映画の特徴となってくる。
サクセスストーリーに重点を置いたものもあれば、あまり知られていない栄光の裏側を描いたものもあり、ラブストーリーのように恋人との関係に焦点を当てて描いたものもある。
そういう意味ではこの作品はいろいろな要素がバランス良く描かれていて、とくにわたしが好きな、バンドの結成や名曲が生まれた過程もしっかり描かれているし、レコード会社とバンドの攻防や、バンド内の人間関係なども興味深く描かれている。
フレディの最初の妻との恋愛と破局や、同性との恋愛関係や乱交パーティーなどはそれほど詳しくは描かれてはいない。しかし、それなりに仄めかされている。このプライベートの描き方も、これぐらいでちょうどいいと思う。
わたしが音楽伝記映画で観たいのは、そのアーティストがどうやって自分の音楽を創造していったかということが中心なので、プライベートのなんだかんだや恋愛のああだこうだは少なめでいい。音楽に影響を及ぼしているような部分はもちろん詳しく知りたいけれども。
この映画はその辺りのバランスがちょうどいい。音楽伝記映画のお手本のような作品だ。
フレディ役のラミ・マレックは、本来の見た目はそれほど似ていないけれのに演技力でちゃんとフレディになりきっているし、クイーンの音楽もたっぷり聴けて、ライヴ・エイドのシーンでは、バンドのパフォーマンスはもちろん、当時の衛星中継の映像を細部まで再現することにこだわったのも面白い。そういうオタクっぽいこだわりはわたしは好きだ。
この作品の大ヒットをきっかけに、柳の下のどぜうを狙って音楽伝記映画が続々と製作される動きがあるとも聞いている。
それはそれで楽しみだ。
(Goro)