“John Wesley Harding”
これはいいな。すごくいい。
だいたいディランのアルバムは1曲目から力の入ったものが多いのだけれど、これは肩の力が抜けていていい。ああ、これを選んでよかったな、という気分になる。
これも若い頃にLPで買って持ってるけれども、若い頃は前作の『ブロンド・オン・ブロンド』の10分の1ぐらいしか聴かなかったと思う。
『ブロンド・オン・ブロンド』はその名の通り完成を極めた黄金のサウンドが聴けるけれども、このアルバムは一転して、ディランのアコギとハーモニカ、そしてベース、ドラム、たまにスティール・ギターというシンプルなアレンジに戻っている。エレキギターも入ってないし、ハモンド・オルガンも入ってない。黄金ではなく、モノクロのサウンドだ。
若い頃はこのアレンジが地味でつまらないと思ったのだろう。でも、あらためて聴いてみると、このモノクロサウンドの味わいは格別だ。
2~3分の短い曲がほとんどを占めてるのもまたいい。曲も充実しているし、永遠に聴いてられると思うほどだ。
ディラン26歳の時のアルバムである。全米2位、全英1位の大ヒットとなった。
そしてアルバムのハイライトはもちろん「見張り塔からずっと」だ。
何万回聴いても飽きないカッコ良さ。エレキなしの、アコギで奏でられるロックンロールは鮮烈だ。ジミ・ヘンドリックスのエレクトリック・バージョンもカッコいいけど、わたしはこのオリジナルのほうがもっと好きだな。
ディランは『ブロンド・オン・ブロンド』のリリース直後、1966年7月にバイク事故で重傷を負った。ケガは数カ月で完治したが、その後1年ほど活動を停止し、隠遁生活を送っていたのだ。このアルバムは彼の復帰作ということになった。
ジャケは旅の途中で出会ったネイティヴ・アメリカンの人たちと記念撮影、みたいな趣だ。
ディランの表情は「やあ久しぶりに戻って来たけど、もうロックスターには戻らないからね。四六時中注目されるのも追っかけられるのもうんざりなんだ。だからカントリーをやることにしたよ。どうせ君たちはまたそれも批判するんだろうけど」みたいな感じかな。
↓ アルバムの1曲目「ジョン・ウェズリー・ハーディング( John Wesley Harding)」
↓ 「見張り塔からずっと(All Along the Watchtower)」