Bob Dylan “Modern Times”
ディラン65歳の作品。なんとこのアルバムでディランは『欲望』以来30年振りの全米1位に輝いた。イギリスでも3位、他の多くの国でもチャートの上位に昇る、世界的大ヒットとなったアルバムだ。
『モダン・タイムズ』というタイトルはその言葉の意味とは逆に、あのチャップリンの映画を思い出してしまうような古めかしい、レトロなイメージだけれど、まさにそんな20世紀の前半にタイム・スリップしたような音楽だ。
ブルースやフォーク、スウィング風の曲もあり、一応ディラン作とはなっているが、どうやら古いブルースやフォークなどの改変によって作られている曲がいくつかあるようだ。
このレトロなスタイルとディープな雰囲気がディランの年齢に相応してしっくりくる。明るい曲調の曲が多いが、声と歌い方もそれによく合っている。
そしてなにより、奥行を感じる録音が素晴らしい。熱気のある柔らかな空気感さえ感じるほどだ。ベースはアップライトらしく、体に響いてくるような弾力が心地良い。夜中にウイスキーでも飲みながら聴いたら最高だろうな。
50年代のような一発録りで録音したらしいが、プロデュースも務めたディラン自身も「今回は最高の音が録れた」と語っていたらしい。
日本の音楽メディアの評価もものすごく高くて、『ミュージック・マガジン』などは、2000年代の10年間から選んだ洋楽ロックアルバム・ベスト100で、なんと1位に選ばれている。
さすがにこれには驚いた。
いや確かに良いアルバムではあるけど、そこはもっと若い連中に譲ってやれよ、と思ったものだ。
↓ シングル・カットされた「サムデイ・ベイビー(Someday Baby)」。原曲はマディ・ウォーターズで「トラブル・ノー・モア」というタイトルで知られている曲だ。
↓ マディ・ウォーターズの「トラブル・ノー・モア」。