デトロイト出身のアリス・クーパーは1969年にフランク・ザッパのレーベルからデビューし、その演劇的なステージや、絞首台に吊るされるというショッキングな演出などで話題を呼び、グラム・ロックやアメリカン・ハード・ロックのはしりとなった。
ステージでの演出についてアリス・クーパーはこう語る。
ホラー映画も俺のショウも、ショッキングな場面がどれだけあっても、あまりに怖いので笑ってしまう。つまり、どこかユーモアがあるんだ。要するに、裏腹の要素がなければいけない、ということなんだ
そんなユーモアのセンスもウケて、彼は少年たちのダーク・ヒーローになった。わたしもそんな彼のキャラクターが大好きだ。
やっぱりロック・スターには、正義の味方なんかじゃなくて、われわれが心の闇の部分を投影し、魂を解放できるような、悪の化身であってほしいと思う。もちろんユーモアもこめて。
彼はこう言ってる。
おれはラディカルな音楽を通して、人間解放を主張しているんだ。
さあ、みんなもアリス・クーパーを聴いて、人間を解放しよう!
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきアリス・クーパーの至極の名曲5選です。
I’m Eighteen(1970)
「僕は18歳、でもなにが欲しいのかわからない。なんて言っていいかわからない。毎日混乱してる」と、大人でも子供でもない年齢に戸惑っている少年の気持ちを歌った歌だ。
メジャー・デビュー・アルバム『エイティーン(Love It to Death)』からのシングルで、全米21位と、アリス・クーパーにとって初めてのヒット曲となった。
Under My Wheels(1971)
71年のアルバム『キラー(Killer)』のオープニング・トラック。
わたしが初めてアリス・クーパーのアルバムを聴いたのがこれだった。一発で好きになった。キレのいい楽曲と演奏が今聴いてもサイコーだ。
School’s Out(1972)
アリス・クーパーの代名詞ともなっている、全米7位、全英1位となった最大のヒット曲。「学校はもう跡形もなくなった、もう永久に夏休みだ!」と歌う歌だ。
当時のアルバム・ジャケットは、学校の机を模したデザインで、それを開けると紙製のパンティに包まれたレコードが出てくるという、実に下品でくだらない仕掛けがされていたそうだ。欲しかったなあ。
Elected(1972)
1972年6月にリリースされたシングルで、全米26位、全英4位のヒットとなり、翌年発表されたアルバム『ビリオン・ダラー・ベイビーズ』に収録された。
「救世主が欲しいんだろ。おれが大統領になってやるから、投票してくれ」と歌う歌だ。
Poison
80年代のアリス・クーパーは低迷していたが、エアロスミスやボン・ジョヴィのメンバーたちの協力を得て制作されたアルバム『トラッシュ(Trash)』の成功で、見事に復活を果たした。
これはそのアルバムからのシングルで、全米7位、全英15位の大ヒットとなり、アリス・クーパーの代表曲のひとつとなった。
入門用にアリス・クーパーのアルバムを最初に聴くなら、初期の代表曲を網羅した『グレイテスト・ヒッツ』がお薦めだ。
最後に、アリス・クーパーはロックについてこう語っている。
ロックは汗みどろだ。高エネルギーを持つ電波であり、セックス・ミュージックだ。頭に語りかけるものではない。
その通りだと思う。意味なんかわからなくても、なんの歌かわからなくてもその高エネルギーで伝わってくる電波を楽しんだらいいのだ。
また、こうも語っている。
日本の人たちが電話で、開口一番に『ムシムシ』というのを聞いて、4匹目のヘビを飼ったとき『ムシムシ』と名付けた。
(Goro)