⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Aerosmith
“Toys in the Attic” (1975)
ザクザクした性急なギター・リフのイントロから始まる、無性にワクワクさせられる最高のオープニングだ。やっぱりギターが二人いるバンドって強いよなあ、なんてことをあらためて思ってしまう。
1975年4月にリリースされた本作は、エアロスミスの3rdアルバムだ。1枚目と2枚目は「ローリング・ストーンズのモノマネ」などと評価も芳しくなく、売れ行きも伸び悩んだが、本作は全米11位の大ヒットとなり、ついに世界的なブレイクを果たした。
ギターのジョー・ペリーによれば、前2作は何年もクラブなどで演奏してきた曲で構成されたものだったが、本作はまったくのゼロから作ったと言う。そしてその過程で、レコーディングアーティストとしての心構えや、締め切りまでに曲を書く方法を学び、全員でアイデアを出しながら、エアロスミスができること、やるべきことが見えてきたと言う。
ちなみにプロデューサーのジャック・ダグラスは「ジョーは、素晴らしいリフを簡単に作り出した。対照的に、スティーヴは天才的な作詞家でありながら、完全に満足できるものになるまで、四六時中あちこちを歩き回りながら歌詞を考え、苦悩していた」と語っている。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 闇夜のヘヴィ・ロック
2 ソルティおじさん
3 アダムのリンゴ
4 ウォーク・ディス・ウェイ
5 イカした10インチ・レコード
SIDE B
1 スウィート・エモーション
2 戻れない
3 虚空に切り離されて
4 僕を泣かせないで
B1「スウィート・エモーション」はシングル・カットされ、全米36位と初めてのTOP40ヒットとなり、さらに翌年にシングル化されたA4「ウォーク・ディス・ウェイ」は全米10位の大ヒットとなった。この2曲とA1「闇夜のヘヴィ・ロック」は、その後もエアロスミスの代表曲としてライヴの定番となり、永く聴き継がれている。
エアロスミスが本作で確立したハード・ロックは、イギリスのハード・ロックとはまたずいぶん趣が違うものだ。
イギリスのハード・ロックがどことなく生真面目で、芸術性や技術の高さを追求する感じが無きにしもあらずであるのに対し、エアロスミスはもっと親しみやすく、ヘヴィでありながらポップでもあり、下品でありながらエンターテインメントを追求している感じが伝わってくる。プログレッシヴなハード・ロックではなく、古の「ロックンロール」をやってる感が強い。
本作の突き抜けたようなカッコ良さを聴いてしまった後で、これ以前のイギリスのハード・ロックを聴くと、ちょっともう古臭く思えてくるほどだ。
本作は後のアメリカン・ハード・ロックの手本となり、ヒップ・ホップと合体したミクスチャー・ロックや、パワー・バラードの元祖や、L.A.ライト・メタルの種子なども見つけることができる。エアロは80年代以降に変わったと賛否両論があるけれども、よく聴けば本作には後のエアロもすべて見え隠れしている気がするのだ。
本作は、アメリカのハード・ロック・バンドの初めての商業的成功作であり、イギリスのハード・ロックとはまた別のオリジナリティが確立された記念碑的作品と言えるだろう。アメリカのハード・ロックの歴史はここから本格的に始まったのだ。
↓ この時代ですでにヒップホップとロックを融合したような、画期的すぎる名曲「ウォーク・ディス・ウェイ」。
↓ 初めてのトップ40ヒットとなり、エアロスミスのブレイクを牽引した名曲「スウィート・エモーション」。
(Goro)