ABBAは1972年にレコード・デビューした、スウェーデン出身の2組の夫婦によるグループだ。
女性のアグネッタとフリーダ(アンニ=フリッド)がメイン・ヴォーカルで、男性のビョルンとベニーが曲作りを担当、4人の頭文字を取ってABBAとなった。
彼らは70年代後半のディスコ・ブームに乗って大ブレイクしたが、決してダンス・ミュージックを専門にしたグループではない。
アバは超優秀なポップ・ソング製造マシーンであり、そのポップ・センスの素晴らしさはカーペンターズやビートルズにもひけをとらない。
彼らのレコード・CDの売上枚数は、地球上のあまりに広範囲にわたる国で売れているために完全に把握されていない。2億枚以上とも言われている。
ポップス史上、最も成功したグループのひとつであり、その音楽は、地球上の様々な異なる人種や文化の壁を超えて愛される普遍性を持っていた。
黄色人種のわたしが小学生のときに初めて好きになった洋楽もアバの曲だった。
あの頃のわたしは、小学生としては知能が中の下ぐらいだったと思うが、今思えばそんな低能児でも好きになれるほどの普遍性を持っていた。簡単な言葉で言えば、めっちゃわかりやすいポップ・ソングだった。だから洋楽入門のレッスン1に最適だったのだ。
その後わたしは、ローリング・ストーンズやニール・ヤングやセックス・ピストルズやニルヴァーナなどを聴き、ロック依存症になって脳が破壊されながら40年が過ぎてしまったけれども、あらためて今アバを聴いても、その天才的なポップ・センスとソングライティング、パフォーマンスの素晴らしさに、あらためて感嘆する。
ジョン・ライドンやエルヴィス・コステロ、カート・コバーン、ノエル・ギャラガーらがアバを賞賛したのもよくわかる。アバはある意味、ロック・アーティストたちがやろうと思ってもできないレベルのことをやっていたのだ。
以下は、久しぶりに聴き直してもやっぱり素晴らしい、わたしが愛してやまないアバの至極の名曲ベストテンです。
Mamma Mia
3rdアルバム『アバ』からのシングルで、全英1位、全米32位。
若い人には、アバの楽曲で構成された2008年のミュージカル映画『マンマ・ミーア!』を観て彼らの音楽を好きになったという人も多いだろう。40年以上経っても色褪せない、アバの音楽の、時代を超越した「わかりやすさ」の魅力の成せる業だろう。
ちなみに「マンマ・ミーア!」とはイタリア語で、驚いたときに使われる言葉だ。「なんてこと!」みたいに訳すのだろうけど、直訳すると「お母さーん!」だから、映画のタイトルは奔放な母の物語に掛けているのだろう。
Waterloo
アバの世界デビューとなったシングル。いきなり全英1位、全米6位の大ヒットとなり、アバの出世作となった。
「ウォータールー」とは、ナポレオンが敗れた「ワーテルロー」の戦いのことだ。
恋した相手に向かって「わたしはまるでワーテルローで負けたナポレオンみたいに、あなたに降伏したの」と言う、どえらい壮大な喩え方をしたラヴソングだ。
「あなたにすべてを捧げるわ。まるで関ヶ原の戦いに敗れた石田三成の気分よ」みたいなことなのだろう。
そんな面白い告白の仕方をしてくる女性なら、たしかに惚れてしまうかもしれない。
Honey Honey
2ndアルバム『恋のウォータールー(Waterloo)』収録曲。シングル・カットされて全米27位のヒットとなった。
アグネッタとフリーダの透き通るようなヴォーカルの美しさが際立つ、爽快なサウンドのチャーミングなポップ・ソングだ。
Super Trouper
7枚目のアルバム『スーパー・トゥルーパー(Super Trouper)』のタイトル曲。シングル・カットされて全英1位のヒットとなった。
「スーパー・トゥルーパー」とは、コンサートなどで使う大きな照明のことだ。
「照明で視界は真っ白だけど、この観客席のどこかに貴方がいるからなにも不安はない」と歌う。その恋人のことを「わたしを包む大きな光」と言ってるようにも取れるダブル・ミーニング的な歌詞だ。
80年代に入り、ディスコ・ビートもやめて、原点回帰のようにアレンジもシンプルになった。
ポップスのアレンジはちょっと控えめな、このぐらいがちょうどいい。
やりすぎはダサいものだ。
The Winner Takes It All
『スーパー・トゥルーパー』からのシングル。全英1位、全米8位の大ヒット曲。
新しい恋人が出来た男に捨てられた女が自分を「敗者」に例え、「勝者が全てを手に入れ、敗者はその横でうずくまる」と歌う悲痛な曲。
しかもこれを歌っているブロンドのアグネッタは、前年に離婚しているのだ。
そしてこの曲を書いたのは隣でギターを弾いている元夫のビョルンだ。
よく歌わせたものだ。
プロ根性というか、なんというか。
Knowing Me, Knowing You
アバが世界制覇を成し遂げた4thアルバム『アライヴァル(Arrival)』からのシングルで、全英1位、全米14位。
夫婦が離婚する、哀しい気持ちを歌った歌だ。
当時は2組とも円満な夫婦生活を送っていたはずだけど、縁起でもない歌を歌ったものだ。
この2年後にアグネッタとビョルンが離婚し、さらに2年後にはベニーとフリーダも離婚してしまう。
少し影のあるメロディと、ギターによる間奏が印象的だ。
Take A Chance On Me
5thアルバム『ジ・アルバム(The Album)』からの大ヒット・シングル。全英1位、全米3位。
まさに乗りに乗っている、ヒット曲を連発していた時期の勢いを感じる。
ホントによくこれだけオリジナリティ溢れる完成度の高いポップスを次から次に量産したものだと、今更ながら感心する。
Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)
日本のオリコン洋楽シングルチャートで11週連続1位という快挙を成し遂げた大ヒット曲。
アバがTBSの『ザ・ベストテン』に出演した時期に発表されたシングルだったので、その影響もあったのだろう。この一度聴いたら忘れられないイントロが少年のわたしのボロいラジオから流れてくるのを当時、何度聴いたことか。
この素晴らしいイントロは2005年にマドンナが「ハング・アップ」という曲でこれまためちゃカッコ良くサンプリングしている。
Chiquitita
6thアルバム『ヴーレ・ヴー(Voulez-Vous)』からのシングル。全英2位、全米29位。
「チキチータ」とはスペイン語で「可愛い娘」という意味だそうで、哀しみに沈む親友の女性を慰め、励ます歌詞の、美しくも力強いバラードだ。
それにしてもいろんな国の言葉を使うグループだ。「マンマ・ミーア」はイタリア語だし、「ヴーレ・ヴー」はフランス語だし。そもそも母国語ではない英語でほとんどの曲を歌ってるわけだし。もちろん、スウェーデン語で歌っている曲もある。
世界的に聴かれるようになって、各国のファンを意識しながら曲作りもしていたのだろう。
まるでグローバル企業みたいな、なんだか凄いスケールのグループだ。
Dancing Queen
『アライヴァル』からのシングルで、全英1位、全米1位、そして世界中のチャートで1位となり、アバが世界を制覇した曲だ。
日本でも50万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。
彼らは1978年11月23日放送のTBS『ザ・ベストテン』の〈今週のスポットライト〉に出演してこの曲を披露した。わたしのアバとの出会いはこのときだった。
もうたぶん1兆回は聴いた気がするけれど、一度も飽きたと思ったことがない。
イントロを聴いた瞬間に、ホットカーペットのスイッチを入れたみたいにじんわりと体温が上昇する。
「史上最高のポップ・ソングは?」と訊かれたら、わたしはたぶんこの曲を挙げるだろう。
入門用にアバのアルバムを最初に聴くなら、1992年に発売されて世界中で3千万枚近く売れたベスト・アルバム『ABBA GOLD』がお薦めだ。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されている。
以上、アバ【名曲ベストテン】でした
(by goro)