モット・ザ・フープル/すべての若き野郎ども (1972)【’70s Rock Masterpiece】

All the Young Dudes

【70年代ロックの名曲】
Mott The Hoople
All The Young Dudes (1972)

1969年にデビューしたイギリスのバンド、モット・ザ・フープルは、4枚のアルバムをリリースするも商業的成功を得られないまま、1972年には解散寸前の状態だった。

1972年2月、デヴィッド・ボウイは「サフラジェット・シティ」のデモテープを彼らに渡したものの、「自分たちには合わないし、バンドは解散することにした」とベーシストのピート・ワッツが丁重に辞退する旨をボウイに電話で伝えた。

ボウイは、彼らの解散を止めるためにすぐさま新しい曲を書き、わずか2時間後にはワッツに折り返し電話し「君たちのために曲を書いてみたから、一度聴いてほしい」と伝えた。

ロンドンの彼らのオフィスに出向いたボウイは、バンドのメンバーたちの前で床にあぐらをかいて座り、アコースティック・ギターでできたばかりの「すべての若き野郎ども」を歌ったという。

バンドは曲を聴いて狂喜した。

ヴォーカリストのイアン・ハンターは「これは大ヒットすると思った。背筋がゾクゾクした」と回想し、ドラマーのデール・グリフィンは「こんな曲をくれるなんて、頭がおかしいんじゃないかと思った」と語っている。メンバー全員が首が折れるほどの勢いで「イエス!」と言い、バンドは解散を撤回し、ボウイのプロデュースでレコーディングすることを決めた。

1972年7月にリリースされたこのシングルは、全英3位の大ヒットとなった。

当時流行のグラム・ロックを代表する曲となり、永遠のロック・アンセムとして聴き継がれることとなった。

ニュース・キャスターは若者のことを悪く言う。それならいっそ本当に事件を起こしてやれ。「すぺての若き野郎ども、ニュースを持ってきてやれ」と歌う、大人たちに反発する若者たちを煽り立てるような内容の歌だ。

この、若者たちに連帯を呼びかけるせつないメロディが、イアン・ハンターのちょっと弱そうなヤツみたいな声によく合っている。

わたしはもう若者ではないけど、心のどこかには相変らず残っている若者部分が反応して、聴けば思わずグッときてしまう。イントロを2小節聴いただけでもう、グッときてしまう。ちょっと恥ずかしいが、きっとわたしだけではないはずだ。

そしてさらに歌詞は、

TVに出てくる大人たちは、おれたちを不良だと言ってる。だからおれたちはもう、TVを見るのはT.REXを見る時だけにするんだ」

「兄貴はビートルズやストーンズのレコードを買ってくるけど、あいつらの何が革命的なのかわからない。面倒くさいし、かったるいだけだ」

と言い放ってもいる。

このときまた新たな世代がロックを聴き始めたというわけだ。

(Goro)