高性能ロックンロール製造機 〜AC/DC『地獄のハイウェイ』(1979)【最強ロック名盤500】#270

地獄のハイウェイ

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#270
AC/DC

“Highway To Hell” (1979)

AC/DCの最大の得意技は、あの野生児みたいなアンガス・ヤングとマルコム・ヤングのギター兄弟が繰り出す、極めてシンプルなリフを延々と繰り返すスタイルだ。

小便してる間に思いついたのかと思うほど、一見なんの面白みもなさそうな短いリフを、アンガス・ヤングが口を半開きにして足を踏み鳴らしながら、なんとかのひとつ覚えみたいに延々と繰り返すだけで、いつの間にか熱々のハード・ロックンロールが出来上がる。まるで高性能ロックンロール製造機だ。

リフに合わせてリズム隊の両輪が強靭なグルーヴで回り出せば、最高のエンジンを積んだ4WDのように、パワー全開で走り出す。そして運転手のボン・スコットがニヤリと笑い、ユーモアと毒気に満ちたワイルドなシャウトで歌い出すのだ。

70年代後半、パンク・ロックやニュー・ウェイヴの台頭に圧倒されるようにして、ハード・ロックの黄金時代は終焉を迎えていた。それでもAC/DCが消えずに、それどころかさらに人気が高まったのは、シンプルながらも自分たちの確固としたスタイルがあったからだろう。

1979年7月にリリースされたAC/DCの6thアルバム『地獄のハイウェイ』は、全米17位、全英8位と、オーストラリアの人気バンドから、世界的な注目を集めるバンドへとブレイクさせる作品となった。そして結果的に、ヴォーカルのボン・スコットが生前に残した最後のアルバムともなった。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 地獄のハイウェイ
2 女たちのリズム
3 地獄の絆
4 タッチ・トゥー・マッチ
5 闇から追い出せ

SIDE B

1 ショット・ダウン
2 熱くやろうぜ
3 流血の叫び
4 ハングリー・マン
5 夜のプローラー

無駄を削ぎ落としたタイトなアレンジ、腰にくるビート、そして悪ガキたちのスケベな笑いが詰まった、限りなく純粋な「地獄行き」ロックンロールの結晶だ。

オープニングを飾るA1「地獄のハイウェイ」は、AC/DCを象徴する代表曲だ。

アンガス・ヤングは当時、「ツアー漬けの生活はまさに“地獄へのハイウェイ”みたいなもんだ」と語っており、ロックンロール稼業が「最高」であり「最悪」でもあると、光と影の両面を歌った、リアリティのある歌になっている。

本作で初めてプロデューサーに迎えられたのが、後にデフ・レパードなどを手掛けるマット・ラングだ。

彼の手腕によってAC/DCのサウンドは巧みに整理され、野生的な魅力を損なわずに、ツカミと洗練を加えて、世界市場で成功できるバンドへと鍛え上げられた。

マルコム・ヤングは後に、「マットは俺たちに“今よりもう一歩良くなるやり方”を教えてくれた」と語っている。

しかし、このアルバムの発表からわずか半年後に、ヴォーカリストのボン・スコットが急逝する。死因は、酔って車の中で寝ているあいだに吐瀉物を喉に詰まらせた窒息死だった。

「人生は退屈で息が詰まる。だから、地獄行きのハイウェイを選んだ」
ボン・スコットは、そんな思いであの歌を歌っているように聴こえる。

それはまるで、生き急いだ者の遺言のようであり、同時に、ロックンロール稼業という極めてタフでクールな生き様の宣言のようでもある。

↓ AC/DCの代表曲となった「地獄のハイウェイ」。

↓ シングル・カットされた「女たちのリズム」。

(Goro)

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