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Carole King
“Tapestry” (1971)
キャロル・キングは、まさにアメリカン・ポップスの歴史そのもののようなアーティストだった。
1942年生まれなのでポール・マッカートニーやジミ・ヘンドリックス、ブライアン・ジョーンズなどと同い年である。
ニューヨークで生まれ育った彼女は、1958年に16歳で歌手デビューする。
しかし発表した4枚のシングルは不発に終わり、17歳で結婚すると、夫で作詞家のジェリー・ゴフィンとのコンビで、作曲活動に専念した。
そして1960年代のおよそ10年間でゴフィン&キングのコンビは、リトル・エヴァの「ロコモーション」やシュレルズの「ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー」、シフォンズの「ワン・ファイン・デイ」、アレサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」など、大ヒットを連発する。
60年代末にはジェリー・ゴフィンと離婚し、70年代に入るとシンガー・ソングライターとして再デビューした。そして1971年2月、29歳のときにリリースした2ndアルバムがこの『つづれおり』である。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 空が落ちてくる
2 去りゆく恋人
3 イッツ・トゥー・レイト
4 ホーム・アゲイン
5 ビューティフル
6 幸福な人生
SIDE B
1 君の友だち
2 地の果てまでも
3 ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー
4 スマックウォーター・ジャック
5 つづれおり
6 ナチュラル・ウーマン
全12曲、次から次に名曲が出てくる名盤だ。シングル・カットされた「イッツ・トゥー・レイト」は全米1位、全英6位の大ヒットとなった。「ナチュラル・ウーマン」も有名だが、わたしは特に「君の友だち」「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」が昔から好きだ。どちらも超のつく名曲だ。まあ、このあたりはすべて彼女の代表曲ではあるが。
アルバムはその年のグラミー賞を受賞し、全米アルバムチャートで15週連続1位、2,200万枚を超す大ヒットとなり、キャロル・キングの名は世界中に知れ渡ることとなった。70年代前半の音楽シーンが「シンガー・ソングライターの時代」と言われたのは、このアルバムのメガヒットに拠るところが大きい。
本作はまた、70年代サウンドの方向性を決定づけたアルバムのひとつとも評されている。
70年代のこういった生楽器中心のシンプルかつリアルなサウンドは、あらゆる時代を通じて最高のサウンドを奏でていたとわたしも思っている。もう50年も経つのに、古臭さをあまり感じずに聴くことができる。
またわたしは彼女のこの声がすごく好きだ。決して美しい声というのじゃないけれども、気持ちの強さから弱さまでのレンジが広い、ひとりのリアルな女性のカッコ良さとエネルギーを感じる。
50年代のロックンロール草創期にデビューし、60年代のポップス黄金時代を支え、そして70年代には時代を象徴するシンガー・ソングライターとして活躍したキャロル・キングは、そのパイオニア的なキャリアといい、実績といい、ロック&ポップス史上最も重要な女性アーティストと言っても過言ではないだろう。
これまで4度結婚し、2012年に音楽界からの引退を表明した。
現在82歳、アイダホ州で暮らしている。
↓ 全米1位、全英6位の大ヒットとなった「イッツ・トゥー・レイト」。
↓ グラミー賞で最優秀楽曲賞を獲得した「君の友だち」。1971年5月にリリースされたジェームス・テイラーによるカバー・シングルは、全米1位、全英4位の大ヒットとなった。
(Goro)