ザ・ジャムのフロントマンとして「イン・ザ・シティ」を書いたとき、ポール・ウェラーはまだ18歳の少年だった。
ザ・ジャムのアルバムを1stから順に聴いていくと、彼らの音楽の変化はそのままポール・ウェラー少年が大人になっていく成長記録のようにも聴ける。
「イン・ザ・シティ」で「この街で輝いているのは25歳以下の若者だけ」と歌ったその少年が25歳になったときに、ザ・ジャムは解散した。そしてキーボード奏者のミック・タルボットと2人で新たに結成したのがザ・スタイル・カウンシルだった。
でも若い頃のわたしは、ジャムは大好きだったけれどスタカンはよくわからなかった。甘ったるくてフワフワしたお洒落なケーキ屋さんみたいな音楽だと思った。きっと当時のわたしが音楽に勢いと直接的な刺激しか求めてない、毎日三食激辛ラーメンしか食べたがらないようなガキだったからだろう。
今あらためて聴いてみると、ソウル、ファンク、ジャズ、ゴスペル、ボサノヴァ、ラテン、ヒップホップ、フレンチ・ポップスまでをも包含する豊かな音楽性と、エンターテインメント性も考慮しながら作り込まれたサウンドにあらためて感服させられる。
それは、25歳を過ぎても輝き続けるために、音楽の壁を打ち破った成長の証のようでもある。ポール・ウェラーは、怒れるモッズ少年から一流の音楽家へと尋常ならざる速度で成長したのだ。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきスタイル・カウンシルの至極の名曲5選です。
Speak Like a Child
1983年に発表したスタカンのデビュー・シングル。全英4位のヒットとなった。60年代ソウルのようなサウンドでスタカンの方向性を示した快作。
My Ever Changing Moods
バラエティに富んだ内容の名盤1st『カフェ・ブリュ(Café Bleu)』からのシングルで、全英5位のヒットとなった。
シングルとアルバム収録のバージョンではアレンジがまったく違っていて、ピアノとヴォーカルのみのアルバム・バージョンのほうもわたしは気に入ってるのだけれども、ここではよく知られているシングル・バージョンの方で。
You’re the Best Thing
これも『カフェ・ブリュ』からシングル・カットされて全英5位のヒットとなった名曲。「きみは最高だ」と歌う歌だが、その言葉をそっくりあなたに返したいよ、と思うほどカッコいい曲だ。
Shout to the Top!
1984年10月にリリースされたシングルで、全英7位のヒットとなった。翌年公開されたアメリカ映画『ビジョン・クエスト/青春の賭け』でも挿入曲として使用された。
フジテレビの朝の情報番組『とくダネ!』のオープニングテーマとしても2年ほど使用されていたことで、日本ではたぶんいちばん有名なスタカンの代表曲。
Walls Come Tumbling Down!
『アワ・フェイヴァリット・ショップ』からのシングルで、全英6位のヒットとなった。なんだかスタカンがロックに戻って来たような曲だ。わたしはこの曲がいちばん好きだな。
このアルバムから正式加入した女性ヴォーカルのD.C.リーは後にポール・ウェラーの奥様となった。
入門用にスタイル・カウンシルのアルバムを最初に聴くなら、『ザ・スタイル・カウンシル・グレイテスト・ヒッツ』がお薦め。
オリジナル・アルバムなら、1st『カフェ・ブリュ』が彼らの世界観がわかりやすく、親しみやすいアルバムだ。
(Goro)