米テキサス州出身のロイ・オービソンは1956年デビューの、ロックンロール・オリジネイターのひとりだ。1960~66年にかけて多くのヒット・ソングを世に送り出した。
彼の美しい声は「ヴェルヴェット・ヴォイス」と賞賛された。わたしもあの声がすごく好きだ。あんな途方もない声のシンガーは他に知らない。
当時のロックンローラーたちが反抗的で男らしいイメージを売りにしていたのに対し、彼は孤独で内向的な男であることを隠さずに歌った。実際彼は極度にシャイで、深刻な舞台恐怖症でもあった。トレードマークとなったサングラスはそれを克服するためにかけたという。
彼は自身のヒット曲のほとんどを自分で書いた、優れたソングライターでもある。
彼の曲は一見ポップで、キャッチーでもあるけれども、その代表曲でもある「プリティ・ウーマン」のように、めくるめく複雑さと意外な展開で驚かせてくれる曲も多い。ひと捻りもふた捻りもあるソングライティングが彼の魅力でもある。
先に断っておくけれども、ロイ・オービソンの代表曲と言えば、1961年に生まれた2曲の大ヒット、全米2位の「クライング」、そして全米1位の「ランニング・スケアード」を挙げるべきなのかもしれないけれど、わたしはあまりピンと来ない。
それらはまた興味があれば聴いていただくこととして、今回はそれよりもわたしが好きな曲を選ばせていただきました。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきロイ・オービソンの至極の名曲5選です。
Oh, Pretty Woman
全米1位、全英1位ほか、世界中のチャートで1位を獲得した、説明不要の代表曲。
1990年にはこの曲を主題歌にした、リチャード・ギアとジュリア・ロバーツによる映画『プリティ・ウーマン』の世界的ヒットで、リバイバル・ヒットもした。わたしもこの映画で、この曲を知ったのだった。
一度聴いたら忘れられないキャッチーな曲でありながら、ふつうの展開を裏切り続ける異形のポップスという、驚くべき名曲だ。
Only the Lonely
ロイ・オービソンにとって初めてのトップ10ヒットで、全米2位、全英1位の大ヒットとなった。
ブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」の歌詞にも出てくる曲だ。スプリングスティーンはロイ・オービソンの音楽を深く愛し、後に「彼のように歌うことを目標にしていた」と語っている。
また、J・D・サウザーの1979年の大ヒット曲「ユア・オンリー・ロンリー」も、この曲へのオマージュだ。
Blue Bayou
アルバム『イン・ドリームス』からのシングルで、全米29位、全英3位。ノスタルジックながら寂寥感もある、独特の雰囲気を持つカントリー・ポップスだ。
1977年にリンダ・ロンシュタットがカバーして、全米3位と本家を上回る大ヒットをぶっ放した。彼女はよく本家を上回る、やんちゃな歌姫なのだ。
Evergreen
オーストラリアのみでシングル・カットされた、なぜかさほど有名でないこの曲は、ニール・ヤングがフェイヴァリット・ソングに挙げている隠れた大名曲だ。ピアノの美しい響きが感情を刺激する。
You Got It
52歳という若さながら心臓発作で急逝したロイ・オービソンが、その死の直前まで制作中だったアルバムからのシングルで、彼の死の翌月にリリースされ、全米9位、全英3位の世界的なヒットとなった。
わたしはこの曲を聴いて惚れこみ、あらためてロイ・オービソンを聴くようになったのだった。
入門用にロイ・オービソンのアルバムを最初に聴くなら、『プレイリスト : ヴェリー・ベスト・オブ・ロイ・オービソン』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はほぼ網羅されています。
(Goro)