ラモーンズ『ラモーンズの激情』(1976)【最強ロック名盤500】#225

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【最強ロック名盤500】#225
Ramones
“Ramones” (1976)

わたしが、アメリカで一番好きなバンドがこのラモーンズだ。

彼らこそ史上最高のロックンロール・バンドであり、ロックンロールが追い求めてきた究極の理想形ではないかとわたしは思う。

ビートルズ以降、ロックンロールは時代とともに複雑に形を変えながら「進化」してきたけれども、それら一切を「ムダ」と看做して、バッサリと省いたのがラモーンズだった。

ラモーンズを聴いていると「ギターやベースってそもそもこうやって弾くべきものなんだな」とか、「そうそう、ドラムってみんなこうやって叩けばいいのに」とか、「歌詞なんてそもそも、”あのガキをぶん殴ってやれ、野球のバットでぶん殴ってやれ、オー・イエー”だけでいいんだわさ」などと思えてくる。

ラモーンズほど愛おしいバンドは他にない。これほど余計なことを考えていない、誠実なロックンロールは他にない。ラモーンズを聴いていると、「わたしはロックンロールが大好きだ」となんだか自慢げに言えるような気持ちになる。そんなことを言っても全然恥ずかしいと思わない、そんな気分になるのだ。

『ラモーンズの激情』は1976年3月にリリースされた、彼らの1stアルバムである。

わたしが十代の終わり頃、初めてラモーンズを聴いたのがこのアルバムだった。14曲と割と多めの曲数ながら、CDプレーヤーに入れるとディスプレイに29分13秒と表示される。30分ないのだ。

平均2分ちょっとの、なんのためらいもない完結でラウドなロックンロールが、14曲立て続けに演奏されて終わる。わたしはシビれた。最高だ、と思った。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ブリッツクリーグ・バップ
2 ビート・オン・ザ・ブラット
3 ジュディ・イズ・ア・パンク
4 アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド
5 チェイン・ソウ
6 スニッフ・サム・グルー
7 ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント

SIDE B

1 ラウドマウス
2 ハヴァナ・アフェアー
3 リッスン・トゥ・マイ・ハート
4 53rd & 3rd
5 レッツ・ダンス(クリス・モンテスのカバー)
6 ウォーク・アラウンド・ウィズ・ユー
7 トゥモロウ・ザ・ワールド

A1「ブリッツクリーグ・バップ」(昔の邦題「電撃バップ」のほうがわたしには馴染み深いけれども)は、アルバムに先駆けてリリースされたラモーンズのデビュー・シングルであり、ラモーンズのシンボルとも言える代表曲だ。ジョーイ・ラモーンによれば、イントロの「ヘイ!ホー!レッツゴー!」の掛け声は「革命の合図」なんだそうだ。冗談かもしれないが、でも間違いない。彼らはロックに革命を起こしたのだ。

曲順は、当時のラモーンズのセット・リストの順番通りに収録されたという。スピード感あふれるオープニングから、時にユーモアあふれる歌詞に笑わされながら、あれよあれよと夢中になっているうちに、B5「レッツ・ダンス」からのたたみかけるような3曲で最高潮に盛り上がって終わる。最高のセット・リストだ。

これ以上はないほどシンプルなロックンロール・バンドなので、アート志向のN.Y.パンクでは逆に異色の存在のようだけど、しかしラモーンズのこの仕上がり具合は、その存在自体がユーモアあふれるポップアートみたいだ。

本作の発売直後にラモーンズがイギリス・ツアーを行ったのがきっかけで、彼らのステージに衝撃を受けた少年少女たちが次々に楽器を手に取り、ラモーンズを真似たパンク・バンドを始めたのだ。ロンドン・パンクの始まりだ。だからロンドン・パンクのバンドたちは、みんなラモーンズ・チルドレンみたいなものだ。

ちなみに、本作は全米アルバム・チャートの111位が最高位で、1年で6千枚しか売れなかったという。

しかし発売から38年後の2014年、アメリカ国内の売り上げがついに累計で50万枚を突破し、ゴールド・ディスクに認定されたそうだ。

↓ 「革命の合図」から始まるラモーンズの代表曲「ブリッツクリーグ・バップ」。

「あのガキをぶん殴ってやれ、野球のバットでぶん殴ってやれ。どうすんだよ、あんなガキに付きまとわれて」と煽るだけの、ユーモアあふれる暴力的な歌詞が魅力の「ビート・オン・ザ・ブラット」

(Goro)

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コメント

  1. サカモト より:

    パンクに興味を持ったとき、クラッシュの後に買ったのがラモーンズでした。
    ラモーンズマニアという無難すぎるアルバムから入ったのですがそこにいくつか入っているハードコアっぽい曲に違和感を抱いていました。
    その後ラモーンズの歴史を知ることとなり時代の流れに彼らが窮した後に生み出したものとわかり、楽曲が好きになりました。頂点で散る美しさもありますがぼくはラモーンズみたいな追い込まれ追い込まれて必殺パンチを繰り出すアーティストが好きです。
    泉谷しかり、ボブ・ディランしかり。まあ王道っていうところが恥ずかしいところですが。

    • Goro より:

      サカモトさん、コメントありがとうございます。

      『ラモーンズマニア』は選曲も曲順も良い最高のベスト盤で、わたしもよく聴きました! ラモーンズのグッズを集めたジャケットも好きです。

      ラモーンズ入門にも最適ですし、コアなファンも必携だと思います。