ヴェルヴェット・アンダーグラウンド【名曲ベストテン】THE VELVET UNDERGROUND Best 10 Songs

The Velvet Underground & Nico

ロックンロールとボブ・ディランを指向したルー・リードが中心となり、実験的な前衛音楽を指向したジョン・ケイルを配して結成されたヴェルヴェット・アンダー・グラウンドは、1967年にポップ・アート界の鬼才アンディ・ウォーホルのプロデュースによってデビューした。

英国で同じく1967年に発表されたビートルズの『サージェント・ペパーズ』がその後のロック界に大きな影響を与えたのは間違いがない、しかしその裏で米国N.Y.では、人気のない地下室でひっそりと、ロックンロールと前衛音楽とポップアートという3つの細胞がひとつになって、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』という異形のモンスターが誕生し、その瞬間にオルタナティヴ・ロックという概念も誕生したのだ。

ロック界に「地下フロア」を増設したという意味で、現代まで続くすべてのオルタナティヴ・ロックの祖として、ロック史におけるヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響力は、ビートルズやボブ・ディランに比肩するものではないかとわたしは考えている。

そんな彼らの楽曲から、以下に名曲ベストテンを選んでみた。

彼らの楽曲の中では比較的聴きやすく、同時に芳醇な地下世界の香りを湛えた10曲になったので、踏み込むのにはちょっと勇気がいるヴェルヴェッツの入門編としても聴いていただ区ことができるかと思います。

第10位 アイ・キャント・スタンド・イット(1969)
I Can’t Stand It

ヴェルヴェッツ解散後10年以上が経過した1985年に、未発表曲集として発売されたアルバム『V.U.』収録曲。

3rdアルバムと同時期に録音され、本来なら4枚目のアルバムとして出されるはずだったのがレコード会社とのトラブルでお蔵入りになっていた楽曲群で、楽曲も演奏もクオリティが高く、正式に4枚目のアルバムとして発表しても良かったのにと思うほどだ。

第9位 ペイル・ブルー・アイズ(1969)
Pale Blue Eyes

1969年リリースの3rdアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Ⅲ』収録のラヴ・ソング。最小限の音でだけで構成された、アルバム中最も繊細で美しい曲だ。

第8位 ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート(1968)
White Light/White Heat

アンディ・ウォーホルやニコとの関係は1stだけで終わり、ルー・リードとジョン・ケイルの関係が悪化していく中で作られた2nd『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』のタイトル曲。

リードvsケイルの関係性がそのまま、ロックvs前衛の闘いとして音に記録されたような、彼らのダークな魅力が過激に放出された音世界とも言えるアルバムだった。

第7位 オール・トゥモロウズ・パーティーズ(1967)
All Tomorrow’s Parties

1stアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』収録曲。

ニコの、感情のカケラも感じられない異様なヴォーカルによる、地下のパーティーで繰り広げられる怪しげな演しもののような歌だ。聴く側も、蝶々みたいな仮面をつけ、全裸に亀甲縛りで聴くのがオツな聴き方というものである。

第6位 ホワット・ゴーズ・オン(1969)
What Goes On

ジョン・ケイルが脱退して、キーボードにダグ・ユールが加入し、ルー・リードの主導で作られた3rd『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Ⅲ』収録曲。前衛的な側面は影を潜め、ロック・アルバムとして完成度の高いものとなった。

この曲はルー・リードの、ボブ・ディラン&ロックンロールへの指向が生の形で出ているような、シンプルな名曲。

第5位 スウィート・ジェーン(1970)
Sweet Jane

今でこそヴェルヴェッツのアルバムはどれも歴史的名盤に数えられているが、当時はまったく売れず、3rdを最後にレコード会社から契約を切られてしまった。

そして新たなレコード会社に移籍し、ヴェルヴェッツ4枚目のアルバムとして1970年11月にリリースされたのが『ローデッド』だった。この曲はその2曲目に収録されている。

しかし、ルー・リードは移籍のプレッシャー等で精神を病んで失踪し、アルバムの発売を待たずに脱退してしまう。この曲はルー・リードがソロになっても歌い続け、ライヴ盤にも何度か収録されている彼の代表曲のひとつだ。

第4位 毛皮のヴィーナス(1967)
Venus in Furs

1st『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』収録曲。

レオポルド・フォン・ザッハー=マゾッホの同名小説『毛皮のヴィーナス』をモチーフにした、「鞭」「革のブーツ」「ひざまずく」といった言葉が並ぶ、退廃と変態がむせ返るように匂い立つ名曲だ。

第3位 宿命の女(1967)
Femme Fatale

1stアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』収録曲。

歌っているのはドイツ人女性のニコという、元々はヴェルヴェット・アンダーグラウンドとはなんの関係もない女性である。アンディ・ウォーホルがヴェルヴェッツをレコード・デビューさせるのと引き換えに、このロクに歌えないジャンキーのニコをゴリ押しして歌わせたというパワハラの賜物である。

ルー・リードは彼女に歌わせるのは嫌でたまらなかったようだが、結果的にニコは3曲しか歌っていないにもかかわらず、その印象の大きさは実力以上のものがあり、アルバムのイメージを決定づけることになった。

第2位 日曜の朝(1967)
Sunday Morning

衝撃の1stアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』のオープニングを飾る曲。

その評判やイメージから、どれほどダークで難解なものが聴けるかと期待する人には肩透かしを食わせることにもなりかねない、ケレン味のないシンプルでメランコリックな小曲だ。

しかしこのシンプルな音楽性はヴェルヴェッツの本質でもあるし、霧がかかったような音の後ろに隠れていそうな謎の奥行きこそが、独特の世界観であり、彼らの魅力でもある。

第1位 僕は待ち人(1967)
I’m Waiting for the Man

1st『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』の2曲目に配置されたこの曲は、ヴェルヴェッツのイメージを端的に表している、それまでのビートルズやビーチ・ボーイズのようなロックンロールとはまるで違う、畸型ロックである。

まるで壊れたラジオのような雑音に包まれた、行儀が悪くて落ち着きなく痙攣しているこの小さなモンスターを、江戸川乱歩の変態奇譚小説を読んだ時のように、ドキドキしながら聴いたものだった。

オリジナル・アルバムを聴くなら、最高傑作の1stから順に聴くことをお薦めする。

バンドの意に沿わない制作経緯や、パワハラのゴリ押しや、完成度の低さや、混乱や錯乱があるとはいえ、ロックと前衛とポップアートの落ち着かない出会いによって偶然に生まれたその異形の姿は唯一無二のものだった。

(Goro)