ザ・ランナウェイズ『悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン』(1976)【最強ロック名盤500】#224

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【最強ロック名盤500】#224
The Runaways
“The Runaways” (1976)

当時の圧倒的な男社会だったロック界で、なんといっても女子だけでロック・バンドを組んだのが画期的だった。今では珍しくもないが、当時の感覚では、土木工事の現場作業員が全員女子、ぐらいの驚きを与えたものだったのだ。

ザ・ランナウェイズはロサンゼルスのバンドだ。2010年に公開された映画『ランナウェイズ』によれば、プロデューサーのキム・フォーリーが、学校へも行かずにシンナーを吸っていた少女たちをかき集めて作ったバンドで、平均年齢17歳、ヴォーカルのシェリーなどは、まだ16歳だった。

16歳でランジェリー姿で大股開きでロックを歌うというのは、今の時代なら大炎上必至だろう。

でもロックンロールってのはそういうものだった。許されるとか許されないなんてそもそも知ったこっちゃない。ロックンロールは”自由”の象徴なのだ。この世が大嫌いな少年少女たちの夢であり、ファンタジーの世界であり、神聖であり、治外法権なのである。

ドラッグの使用なんてあたりまえ、ホテルの部屋を破壊し、窓からテレビを放り投げたってロックスター伝説のひとつにすぎないし、グルーピーたちがロックスターとヤるためにドアの前に列を作るのもあたりまえだったのだ。

でも今は違う。

ロックスターが女とヤッただけで不倫だのなんだのと真面目な顔で報じられ、大麻でも一服吸おうものならもう二度と表舞台に復帰できない。一般庶民用のルールでバッシングされ、ファンタジー界から追放されるのだ。

「ミュージシャンだろうがなんだろうが、おまえたちだって特別じゃない、わたしら一般庶民と同じルールで生きろ」ということなのだろう。

今はもう、ロックンロールが許されない時代なのだ、きっと。もはやファンタジーではいられなくなったから、ロックンロールは死んでしまったのかもしれない。

女子ながらしっかり「セックス、ドラッグ、ロックンロール」を地で行ったザ・ランナウェイズは、本国アメリカでは成功しなかったが、日本では人気が沸騰した。

本作は1976年3月にリリースされた、彼女たちのデビュー・アルバムだ。全米アルバム・チャートでは194位とほとんど売れなかったに等しいが、日本のオリコンではシングル・カットされた「チェリー・ボンブ」が洋楽部門の1位を獲得する大ヒットとなった。翌年には来日公演も行なっているが、移動の車にまでファンが群がる、まるでビートルズみたいな騒ぎだったという。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 チェリー・ボンブ
2 あなたに夢中
3 錯乱する頭脳
4 恋の稲妻
5 ロック・アンド・ロール

SIDE B

1 ラヴァーズ
2 アメリカン・ナイツ
3 ブラックメイル
4 シークレッツ
5 行きづまりの正義

あらためて聴くとシェリーの、怒りに満ちた吐き捨てるようなヴォーカルが素晴らしい。全体的に、ハード・ロックの要素もあるにはあるが、しかしこれはパンクである。

当時のロックシーンの閉塞感を突き破ったような真っ直ぐな勢いと力感のある演奏は、ランナウェイズの3週間後にニューヨークでデビューする、ラモーンズと印象が被る部分も多い。その意味でランナウェイズは、米西海岸初のパンク・ロック・バンドと言ってもいいのではないかと思う。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカバー、A5「ロック・アンド・ロール」などという選曲もやはりパンク志向だ。

ちなみに本作は”The Runaways”という単なるセルフ・タイトルなのだけれども、邦題は『悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン』という、これも今の感覚で言えばセクハラ目線やキワモノ的な扱いを感じるタイトルではあるけれども、結果的に本国よりも売れたのだからその戦略はきっと正解だったのだろう。

昭和の下世話な販売戦略そのものだが、しかしそういうことをしなくなって、原題カタカナ表記があたりまえになったのも、日本で洋楽が売れなくなったことと関係があるような気がしないでもない。

77年にはシェリーが脱退し、ギターのジョーン・ジェットがヴォーカルも兼任するようになるが、やがてパンク的なアプローチを主張するジェットと、ハード・ロックを追求したい他のメンバーとの方向性が合わなかったことなどもあり、79年には解散してしまった。

↓ ランナウェイズの代表曲として知られるデビュー・シングル「チェリー・ボンブ」。シェリーのオーディションのためにジョーン・ジェットとキム・フォーリーがその場で急拵えした曲だった。

↓ ジョーン・ジェットが書き、彼女自身がリード・ヴォーカルを取った「あなたに夢中」。

(Goro)

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