恐怖と反社会のグロテスクなテーマパーク 〜マリリン・マンソン『アンチクライスト・スーパースター』(1996)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#364

B000001Y2U

⭐️⭐️⭐️

【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#364
Marilyn Manson
“Antichrist Superstar” (1996)

本作を聴いたときに真っ先に思い浮かべたのが、アリス・クーパーだった。

70年代に「学校は吹っ飛んでもうおしまい、ずっと休みだ!」と歌い、ステージでは絞首刑で吊るされたり、電気椅子やギロチンといったショッキングな演出で青少年たちを驚喜させた、あのアリス・クーパーである。

反社会的でホラー要素の強いキャラクターや音楽は、いつの時代も思春期の少年たちの胸を躍らせるのである。

少年たちは「死」というものに興味津々で、怖いものやアブないものを見たり聞いたりしたくてたまらないのだ。これは健全なことである。

なので、マリリン・マンソンみたいな、大人から見たらキモくて嫌悪感を催すものがダーク・ヒーローとして、あるいはトリックスターとして青少年に支持されるのは必然なのだろう。

70年代のブラック・サバスに始まる悪魔崇拝などのホラー要素を引き継いできたヘヴィ・メタルがこの時代の少年たちにはもはや刺激に乏しく、あまり怖くもないお化け屋敷みたいになりつつあったときに、それを超える、最新型のリアリティとグロテスクと刺激のあるお化け屋敷をオープンさせたようなものだ。

音楽として、ポップ・ミュージックとして楽しめるし、なんならうっかりメロディを口ずさんでしまうほどだ。そんな、ハードでありながらキャッチーなところもやはりアリス・クーパーと同じだ。

本作は、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがプロデュースに参加し、彼によって設立されたレーベルのスタジオで録音された。インダストリアル・ロックのプロフェッショナルが手がけた、恐怖と反社会のグロテスクな一大テーマパークだ。

マンソンとメンバーはあえて「暴力的で敵対的な環境」を作り出すために、過度な薬物摂取と睡眠不足の中で作業したという。おかげでギターのデイジー・バーコウィッツとマンソンが対立、デイジーは制作途中で解雇された。

本作はマリリン・マンソンの2ndアルバムとして1996年10月にリリースされた。

【オリジナルCD収録曲】

1 イレスポンシブル・ヘイト・アンセム
2 ザ・ビューティフル・ピープル
3 ドライド・アップ,タイド・アンド・デッド・トゥ・ザ・ワールド
4 トゥーニキット
5 リトル・ホーン
6 クリプトオーキッド
7 デフォーモグラフィー
8 ウォームボーイ
9 ミスター・スーパースター
10 エンジェル・ウィズ・ザ・スキャブド・ウィングス
11 カインダーフェルド
12 アンチクライスト・スーパースター
13 1996
14 ミニット・オブ・ディケイ
15 ザ・リフレクティング・ゴッド
16 マン・ザット・ユー・フィアー

アルバムは、一人の無力な存在(Worm:虫)が絶望と怒りを経て、最終的に世界を破壊する独裁者(反キリストのスーパースター)へと変貌を遂げる物語を描いたコンセプト・アルバムである。このあたりは、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』をなんとなく想起させるものがある。

そしてこの後にリリースされた3rdアルバム『メカニカル・アニマルズ』、そして4th『ホーリー・ウッド』へと続く「三部作」の第1弾でもある(ただし、ストーリーとしては本作が最終話にあたるらしい)。

強刺激でありながらしかしナイン・インチ・ネイルズよりもエンターテイメントの要素が強い本作は、刺激と怖いもの見たさに飢えていた世界中の健全な青少年たちに支持され、全米3位、全世界で700万枚を売る、世界中の良識ある大人たちが眼を剥く大ヒットとなった。

↓ アルバムに先駆けてリリースされた先行シングル「ザ・ビューティフル・ピープル」。グロテスクで悪夢的なMVは、MTVでヘビロテされ、アルバムのセールスに大きく貢献した。

↓ 2ndシングルとなった「トゥーニキット(止血帯)」。比較的聴きやすい曲だけれども、MVはさらに気持ち悪く、不快感満点だ。

(Goro)

created by Rinker
UNIVERSAL MUSIC GROUP