ピンク・フロイド『炎 (あなたがここにいてほしい)』(1975)【最強ロック名盤500】#220

Wish You Were Here

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#220
Pink Floyd
“Wish You Were Here” (1975)

昔からわたしがプログレが苦手なのは、その音楽の異様な複雑さと思わせぶりな雰囲気が、何を意味しているのか、何を伝えたいのかがイマイチよくわからないからである。

いや、単にわたしの理解力の問題かもしれないが、しかし一応ロックと名乗る庶民の音楽である以上は、わたし程度の阿呆でも理解できるぐらいであって欲しいと思う。まあ、好き嫌いの問題かもしれないが。

その点ピンク・フロイドには、その音楽が何を意味してるのか、何を伝えようとしているのかが、わたし程度の阿呆にもちゃんと理解できるように作られているのでありがたい。

本作はピンク・フロイドが1975年9月に発表した、9枚目のアルバムである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 クレイジー・ダイアモンド(第1部)
2 ようこそマシーンへ

SIDE B

1 葉巻はいかが
2 あなたがここにいてほしい
3 クレイジー・ダイアモンド(第2部)

アルバムは全米1位、全英1位となり、セールスは1,300万枚を超える大ヒットとなった。

A1とB3の二部に分かれた「クレイジー・ダイアモンド」は、初期のピンク・フロイドのメンバーであり、中心的な役割を果たしていた、シド・バレットのことを歌ったものだ。

彼は天才だったが、しかし薬物中毒から精神を病み、バンドから脱退せざるを得なかった。

「クレイジー・ダイアモンド」はピンク・フロイドの代表曲のひとつとなった。切ない曲調と心に沁みるメロディー、そしてギルモアの魂の込もったギター・プレイ。余計な複雑さなど少しもなく、なんの外連味も感じられない。

そしてアルバム・タイトルにもなっているB2「あなたがここにいてほしい」もまた、シド・バレットのことを歌っている。

ここでのギルモアの印象的なアコースティック・ギターの美しさと滋味あふれる歌声は心の奥深くを揺り動かすような感動がある。泣けるプログレだ。デヴィッド・ギルモアとロジャー・ウォーターズの共作だが、両者ともこの曲をピンク・フロイドの最高傑作に挙げている。

それにしても「あなたがここにいてほしい」という邦題にはグッとくるものがある。
きっとだれもが、ここにいないだれかのことを思いながら聴いてしまうのだろう。

このアルバムのレコーディング中に、シド・バレットが突然スタジオに現れたという逸話がある。

髪も眉も剃り落とし、肥え太った男を、最初は誰もシドだと気づく者がいなかったという。

スタジオをうろうろと支離滅裂な行動をしながら「ぼくはなにをやればいいんだい?」と訊くシドに、メンバーたちは涙が止まらなかったという。

メンバーがシドに会ったのはそれが最後となり、シドは糖尿病の合併症により2006年に60歳で死去した。

↓ アコースティック・ギターの響きが美しい「あなたがここにいてほしい」。

↓ シド・バレットに捧げられた「クレイジー・ダイアモンド (第一部)」。

(Goro)

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