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Bob Marley & The Wailers
“Live!” (1975)
どうにも大音量で聴かないと気が済まないというアルバムがあるものだ。
わたしにとってはこのアルバムはそのひとつだ。
十代の頃はそれでよく母親に「うるさい!」と怒鳴られたものだ。結婚してからはカミさんに「近所迷惑だからやめて」と懇願され、思春期になった頃の娘には「いい加減にして!」とキレられたものだ。
なので仕方なく、家族の留守を狙うか、車の中で聴く。
どうにもこのヘビー級のベースと突き刺さるような鋭利なドラムの音を肉体にドスン、ビシッと、直接感じたくなってしまうのだ。いや。別にMではないのだけれども。
誤解を恐れずにいえば、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの音楽というのは、そんなふうに、聴くというよりは肉体的に体感すべき音楽なのだと思う。
本作は1975年7月に英ロンドンのライシアム劇場で行われたコンサートの模様を収録したライヴ盤である。同年12月にリリースされた。
前年にはエリック・クラプトンがカバーした「アイ・ショット・ザ・シェリフ」が世界的な大ヒットとなったこともあって、ボブ・マーリーへの注目が最高潮に高まっていた時期であり、その熱い期待を上回るほどの強烈な演奏に観客が熱狂しているのが伝わってくる。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 トレンチタウン・ロック
2 バーニン・アンド・ルーティン
3 ゼム・ベリー・フル
4 ライヴリー・アップ・ユアセルフ
SIDE B
1 ノー・ウーマン、ノー・クライ
2 アイ・ショット・ザ・シェリフ
3 ゲット・アップ、スタンド・アップ
観客の自然発生的な大合唱が起こったB1「ノー・ウーマン、ノー・クライ」は本作からシングル・カットされ、全英8位と、ボブ・マーリーにとって最大のヒット・シングルとなった。
ボブ・マーリーの音楽、ウェイラーズの演奏は、野生的な熱量と肉体性、そして強い信念と説得力を持つ「抵抗の音楽」だった。それは、いつからかロックが忘れかけていたものだったのだ。
イギリスに多く住んでいたジャマイカ人の移民たちにまずは共感を呼び、さらに失業や貧困で社会から疎外されていた英国人の若者たちへとその共感は広がった。
そして、レゲエとパンクの共闘が始まったのである。
↓ シングル・カットされ全英8位のヒットとなった「ノー・ウーマン、ノー・クライ」。
↓ つんのめりそうな勢いのラストナンバー「ゲット・アップ、スタンド・アップ」。独特のコール&レスポンスがまたいい。
(Goro)