Howlin’ Wolf
Spoonful (1960)
ウルフ大先生は1951年に41歳でデビューした、かなりの遅咲きである。
チェスレコードから1960年にリリースされたシングル「スプーンフル」も、50歳での録音ということになる。
すごくシンプルな曲だけど、大先生の重量級のヴォーカルと、巨人の歩みみたいな独特のスウィングするグルーヴがこの曲を魅力的なものにし、斬り合いのようなギターの空中戦がとどめを刺す。白人のブルース好きたちがカバーしまくったのでいろんなバージョンがあるけど、わたしにとってはこのオリジナル以上のものは無い。まったく無い。
とくにわたしがこの曲を初めて聴くことになった、とある超有名白人バンドのアルバムに収録されていたカバーは酷かった。一度聴いただけで嫌いになった。スウィング感なんてまるでなく、牛の歩みのようにノロノロとしていて、永遠に終わらないかのようなインプロビゼーションがダラダラと続く、なんと16分を費やすカバーだったのだ。浅はかだった若いわたしは、これがハウリン・ウルフの名曲だとしたらわたしはハウリン・ウルフは嫌いだなと思ったものだった。
それから10年以上もしてから聴いたオリジナルは全然違うことに驚いたものだ。曲のキレが全然違う。一度聴いただけで好きになった。
ストーンズあたりは別としても、それ以来、白人ブルースバンドはわたしはあまり信用しないようにしている。
歌詞はたぶんだけど、クスリのことでもあり女性のことでもあり人生のことでもあるように、多義的に書かれている。
ダイヤのスプーン一杯で満足だ
金のスプーン一杯で満たされる
おまえの愛のスプーン一杯でおれの魂は満たされる男たちはそのことで嘘をつき
そのことで泣き、そのことで死ぬ
すべてはスプーン一杯のことで争ってるのさ
たったスプーン一杯のことで
(written by Willie Dixon)
わたしは若い頃はこの先生のことはよくわからなかったけど、今あらためて聴くとすごく良いので、大先生と呼んでいる。
やはり年を取らないとわからないことはたくさんあるものだ。
(Goro)