キンクス『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』(1970)【最強ロック名盤500】#163

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【最強ロック名盤500】#163
The Kinks
“Lola Versus Powerman and the Moneygoround, Part One” (1970)

それまでのキンクスのアルバムで最低のセールスを記録した1968年の『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』、そしてさらにそれを下回る壊滅的なセールスを記録した69年の『アーサー、もしくは大英帝国の衰退および滅亡』に続く、絶体絶命のコンセプト・アルバム第3弾の本作は1970年11月に発売された。

1966年のビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』、翌年のビートルズ『サージェント・ペパーズ』によって一大ブームとなった「コンセプト・アルバム」は、すでにその流行をとっくに終えていたのだが、キンクスだけは(と言うよりレイ・デイヴィスだけは)まだしつこく作り続けていたのである。

レコード会社もよく我慢して作らせてくれたものだと思う。

しかしこのコンセプト・アルバムというスタイルはレイ・デイヴィスの資質に合っていたのだろう。作品を重ねるごとにどんどん内容も充実していった。

当時の音楽業界を皮肉った内容の本作は、本国イギリスではやはり絶望的に売れなかったものの、アメリカではアルバムチャートの35位まで上昇する5年ぶりのヒットとなり、キンクスの「復活作」として注目を浴びた。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 競争者
2 見知らぬ人
3 デンマーク・ストリート
4 ゲット・バック・イン・ザ・ライン
5 ローラ
6 トップ・オブ・ザ・ポップス
7 マネーゴーラウンド

SIDE B

1 ディス・タイム・トゥモロウ
2 家路はるかに
3 ラッツ
4 エイプマン
5 パワーマン
6 自由に向かって

シングル・カットされたA5「ローラ」は全英2位、全米9位と久々の大ヒットとなり、キンクスの代表曲に加えられた。その勢いで、続くシングルB4「エイプマン」も全英5位のヒットとなった。

全13曲中11曲がレイ・デイヴィスの作で、A2「見知らぬ人」とB3「ラッツ」が弟のデイヴ・デイヴィスの作である。わたしはこの「見知らぬ人」がとても好きだ。

曲調は相変わらずバラエティに富んでいるが、随所にカントリーの要素が目立ってきているのが本国よりも米国で支持された理由かもしれない。

パフォーマーとソングライターとプロデューサーを兼任したレイ・デイヴィスが、芸術性と大衆性を両立させ、さらに商業的な成功へと結実させた、キンクスの最高到達点だ。

↓ 全英2位、全米9位の大ヒットでキンクスの復活を印象付けた代表曲「ローラ」。

↓ デイヴ・デイヴィス作の哀愁漂う「見知らぬ人」。ヴォーカルもデイヴだ。ドラッグのオーヴァードーズで亡くなった学校の友人のことを歌っているそうだ。

(Goro)

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