80年代ロック【必聴究極名盤10選】’80s Rock Greatest 10 Albums〈2025改訂版〉

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パンク・ムーヴメントの嵐が吹き荒れた後、今度は”ニュー・ウェーヴ”という大波が襲うところから始まった80年代のロック・シーンは、電子楽器の普及も相まって、それまでとはまったく違うサウンドへと変化していく。

電子楽器の流行は当時のリスナーがそれを好んだからだが、新たなサウンドを求めて実験精神から使う者もあれば、商業主義的に流行に迎合するために導入する者もあった。ベテラン・アーティストたちも流行に乗っかって電子楽器を導入したものの、もともと持っている音楽性とうまく融け合わず、非常にダサい結果となり、黒歴史をつくる者も多かった。

わたしには、本来のロックの味や熱量が薄れ、リアリティも失われていったように思えた。それは生き残るために仕方なかったのかもしれないけれども。

また、バグルスが「ビデオがラジオスターを殺す」と予言した通りに、MTVの開局によってミュージック・ビデオが大きな商業的成功をもたらすようにもなり、ヴィジュアルが重要視されたり、MVの製作費も莫大なものにな流など、ロックの在り方も大きく変わっていった。

一方で、その頃から台頭してきた英米のインディペンデント・レーベルでは商業的とは言えない音楽性のアーティストたちが細々ながら自由に活動していたが、やがてカレッジ・ラジオなどを中心に若者たちの支持を得、オルタナティヴ・ロックの世界を形成していく。

それは90年代に大きく花開き、大逆転現象を引き起こすことになる。

そんな80年代の、厳しい状況の中から生まれたロックの必聴名盤を10枚選んでみた。

(以下、リリース順)

AC/DC
『バック・イン・ブラック』(1980)

AC/DC “Back In Black”

Back in Black (Dlx)

全世界で5,000万枚を超えるメガ・セールスを記録した、AC/DCの代表作だ。
前任のヴォーカリスト、ボン・スコットが33歳で急逝したため、新ヴォーカリストのブライアン・ジョンソンを迎えて制作された。

喪中のような真っ黒なジャケットに、鐘の音から始まるアルバムだが、演奏は喪中どころか圧倒的な原始のエネルギーが迸る、野人たちの狂乱の疾走である。

トーキング・ヘッズ
『リメイン・イン・ライト』(1980)
Talking Heads “Remain in Light”

B000H8RVUW

アフリカ音楽の要素にファンクのグルーヴを融合させ、ニュー・ウェイヴの革新性を加えた、オリジナリティあふれる異色作だ。まさに「普通のロックお断り」という状況だった80年代の幕開けにふさわしい画期的な傑作だった。

聴けば聴くほどに、刺激的で、快楽的で、高揚感を感じる、中毒性の高い麻薬のようなサウンドでもある。

ザ・ポリス
『シンクロニシティー』(1983)
The Police “Synchronicity”

Synchronicity -Hq- [12 inch Analog]

ポリスの最後のアルバムとなった5作目であり、彼らの最高傑作と評される名盤だ。

耳新しい実験的なサウンドでありながらポップな聴きやすさは失われていない理想的な内容で、17週連続全米1位と大ヒットを記録し、「見つめていたい」「キング・オブ・ペイン」「アラウンド・ユア・フィンガー」などのシングル・ヒットも生まれた。

バンドは最高到達点に達し、もうこれ以上はないというところでの解散だった。

ブルース・スプリングスティーン
『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』(1984)
Bruce Springsteen “Born in the U.S.A.”

B00VJ28BM2
世界各国でチャート1位を獲得し、3,000万枚を超すメガ・ヒットとなったモンスター・アルバム。ただし、当時から現在に至るまで、ファンの間でも賛否両論のある作品でもある。

「賛」のほうは、スプリングスティーンのアルバムの中でも特にキャッチーな名曲がズラリと並ぶ、楽曲の充実。「否」のほうは、当時流行のシンセサイザーやゲート・リヴァーブ・ドラム、ヴォーカルの加工などで派手に飾られた、リアリティのないサウンドだ。

その賛否も含めて、この時代を象徴し、大きな影響を及ぼした作品であることは確かだ。

プリンス
『パープル・レイン』(1984)
Prince “Purple Rain”

パープル・レイン

「ビートに抱かれて」「レッツ・ゴー・クレイジー」といった、前衛とポップを両立させた奇跡のような世界的ヒットを含む、プリンスの代表作。

多くのロック・アーティストが失敗の限りを尽くしたシンセサイザーという悪魔の楽器を余裕で使いこなし、80年代を象徴するサウンドを創り上げ、過去のロックの象徴とも言えるエレキギターの超絶プレイと見事に融合させたプリンスは、まさにこの時代の救世主のような天才だった。

ザ・スミス
『クイーン・イズ・デッド』(1986)
The Smiths “The Queen Is Dead”

The Queen Is Dead

強烈なタイトル曲「クイーン・イズ・デッド」に始まり、「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」「ゼア・イズ・ア・ライト」など代表曲を多数含むザ・スミスの最高傑作となった3rdアルバムだ。

シンセサイザー頼みのポップ・ロックが溢れた80年代のイギリスで数少ない、人間の喜怒哀楽をストレートに感じる誠実な音楽を聴かせたのがこのザ・スミスだった。だからこそ、30年以上が経過した現在でも色褪せず、リアリティもそのままに聴くことができる。

U2
『ヨシュア・トゥリー』(1987)
U2 “The Joshua Tree”

The Joshua Tree [12 inch Analog]

全世界で2,500万枚を売り上げ、U2最大のヒット作となった名盤。

軽薄で安っぽい電子音が溢れる80年代サウンドが苦手でリアルタイムのロックを聴かなかった当時のわたしがめずらしく耳を奪われたのが、このアルバムから生まれたヒット曲「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」や「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー」、「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」などだった。

アルバムは壮大なスケールの、ロックの世界を超えてしまったかのような圧倒的な作品だった。

ダイナソーJr
『ユーアー・リヴィング・オール・オーヴァー・ミー』(1988)
Dinosaur Jr. “You’re Living All Over Me”

閉塞停滞していたロック・シーンを正面突破し、完全に流れを変えた、ダイナソーJrの2nd。90年代のオルタナティヴ・ロック革命への扉を開いた記念碑的作品だ。

ギター・ロックの復活を高らかに告げる、バンド名そのままに恐竜の咆哮のようなJ・マスシスのギター・プレイが圧巻。絶対に爆音で聴くべきアルバム。

ピクシーズ
『ドリトル』(1989)
Pixies “Doolittle”

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1989年4月にリリースされた2ndアルバム。ラウドなギターとポップなメロディー、静寂と轟音のメリハリ、爽やかなユーモア、そして顔に似合わぬチャーミングな愛らしさがピクシーズにはあった。

カート・コバーンが「ピクシーズを聴いて、人生が変わった」と語ったように、彼らはオルタナティヴ・シーンに多大な影響を与え、ロックの歴史を変える起爆剤となった。

ザ・ストーン・ローゼス
『ザ・ストーン・ローゼス』(1989)
The Stone Roses “The Stone Roses”

Stone Roses -Transpar- [12 inch Analog]

80年代の最後を飾ったのがこのストーン・ローゼスの1stアルバムだった。英国ギター・ロックの復活を告げた作品であり、ダンス・ビートとギター・ロックを融合させた革新的作品でもあった。

そして、インディーズがメジャーを超え、オルタナティヴ・ロック時代の幕開けを告げた歴史的傑作でもあった。ほぼすべてが名曲という、滅多にないほどの名盤だ。

以上、1980年代の【必聴究極名盤10選】でした。

前半はいかにも80年代らしい、シンセなどの電子楽器を使った傑作が並び、後半はその反動で昔ながらのギター・ロックに戻ったものが並んだ形になりました。意図したわけではなかったのですが、ちょうど80年代ロックの移り変わりを端的に表しているようなチョイスになったかと思います。

もちろん異論は山ほどあるかと思いますが、とりあえずお楽しみいただけましたら幸いです。

(Goro)

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