1970s
年代別に必聴名盤を10枚ずつ選ぶシリーズの第3弾、1970年代編。
70年代は”ロック黄金時代”と呼ばれた、ロックが最も盛り上がった10年だった。アメリカでは内省的な歌を歌うシンガー・ソングライターたちが注目を集めることから始まり、カントリー・ロックが台頭し、イギリスではハード・ロックやプログレッシヴ・ロックなど、より複雑で難解なロックが、年齢を重ねた大人のロックファンたちの支持を得、商業的な成功を収めた。
一方で新しい世代のロック少年たちはグラム・ロックに魅了されるなど、世代間の断絶も生まれ、やがて複雑難解なロックや商業主義にアンチテーゼを唱えるパンク・ロックが登場し、ロック史上初の内部クーデターのような革命が起こった。この革命によってロックシーンは一変し、激震は新しい波を呼び、ロック界の世代交代が一気に進んだ。
(※以下、リリース順)
『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』(1970)
Neil Young “After the Gold Rush”
ニール・ヤングの最高傑作として知られる3rdアルバム。1960年代という学生運動やドラッグやロックで燃え盛った時代が終わった喪失感と虚無感、同時に1970年代という新たな時代への期待と不安が錯綜するような、時代の変わり目を象徴するようなアルバムだ。
天才的なメロディメーカーでもあるニールの、弱弱しい儚げな声で歌われる美しい歌はピアノやアコギによく合うが、しかしときには情念が迸るような激しいエレキギターのソロも聴かせる。この振幅が彼の音楽の醍醐味だ。
『ムーンダンス』(1970)
Van Morrison “Moondance”
アイルランド出身のバンド、ゼムの中心人物として1964年にデビューしたヴァン・モリソンのゼム脱退後のソロ3作目。
一般的な知名度は低いかもしれないが、聴いてみれば素晴らしい楽曲が完璧なアレンジで並ぶ、圧倒的な名盤とわかるはずだ。代表曲「クレイジー・ラヴ」も収録されている。
「自分が求めているものを作りたいから」と初めてセルフ・プロデュースで臨んだ結果である。このとき彼はたったの24歳だった。天才すぎる。
『スティッキー・フィンガーズ』(1971)
The Rolling Stones “Sticky Fingers”
ストーンズが自ら設立したレーベル、ローリング・ストーンズ・レコードからの第1弾で、代表曲「ブラウン・シュガー」で幕を開ける本作は、前作までのルーツ・ミュージックへの回帰も維持しながら、よりパワフルでエンターテイメント性も高い、バラエティに富んだ曲作りがされている。
60年代ロックから完全に脱皮した、オリジナリティあふれる、まさに新時代のロック・アルバムだ。死去したブライアン・ジョーンズに替わって加入したギタリスト、ミック・テイラーの活躍も光る。
『レッド・ツェッペリンⅣ』(1971)
Led Zeppelin “Ⅳ”
「天国への階段」「ロックンロール」「ブラック・ドッグ」などの人気曲が収録された、一般的にはツェッペリンの代表作として知られている4枚目だ。とっつきやすい内容なので、ツェッペリンを初めて聴く人にもお薦めだ。
『ジギー・スターダスト』(1972)
David Bowie “The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars”
1972年~73年にイギリスで巻き起こったグラム・ロック・ブームを象徴する作品であり、デヴィッド・ボウイの代名詞ともなった最高傑作でもある。「ジギー・スターダスト」「スターマン」「サフラゲット・シティ」「レディ・スターダスト」など名曲満載だ。
当時の少年少女たちは、複雑なハード・ロックや難解なプログレよりも、わかりやすい音楽性で華のあるグラム・ロックのほうに惹かれ、ボウイやマーク・ボランは、新世代のロック・ヒーローとなったのだった。
『狂気』(1973)
Pink Floyd “The Dark Side of the Moon”
ピンク・フロイドの8枚目のアルバムで、全世界で5,000万枚を超えるメガ・セールスを記録した、ロック史上最も売れたアルバムのひとつだ。
ピンク・フロイドと言えばプログレッシヴ・ロックの代表格として知られるが、このアルバムはコンセプト・アルバムのような体裁ではあるものの、なんだかよくわからないようなプログレとは異なり、それほど複雑でもなく、美しい歌もあればカッコいいギター・ソロもある、音楽の喜びに溢れた感動的なギター・ロックの傑作である。
基本的にプログレが嫌いなわたしだが、このアルバムを筆頭に、ピンク・フロイドはちゃんとロックしてるので好きなのだ。
『ラモーンズの激情』(1976)
Ramones “Ramones”
ニューヨーク・パンクの代表格、ラモーンズの1stアルバム。
当初は全然売れなかったので、これが世界を変えたとは言い難いが、パンク・ロックというスタイルを発明し、彼らがイギリスでツアーを行ったことをきっかけにロンドンが燃え上がることになったのである。
とにもかくにも、パンク・ロックの原点であり、最高のロックンロール・アルバムであることは間違いない。
『キー・オブ・ライフ』(1976)
Stevie Wonder “Songs in the Key of Life”
18枚目のオリジナル・アルバムとして1976年9月にリリースされ、全米チャートで13週連続1位、500万枚以上を売り上げる大ヒットとなった、2枚のLPと1枚のEPのセットという分量の大作。
シンセサイザーなどの新しい楽器も試しつつ、ソウル、ジャズ、ロック、ポップスなどジャンルを自由に横断しながら、バラエティに富んだ楽曲が楽しめる、実験性豊かなアルバムとなっている。天才スティーヴィー・ワンダーの、創作意欲がピークに達した黄金期の最高傑作。
『勝手にしやがれ』(1977)
Sex Pistols “Never Mind the Bollocks”
老化や商業主義や進化の限界で硬直しかけていたロック・シーンを卓袱台返しし、音楽にとどまらずファッションやカルチャーにも多大な影響を及ぼし、まさに世界を変え、大人たちを震え上がらせたクソガキたちが創った唯一無比のアルバムだ。
アグレッシヴなサウンド、清々しいほどの疾走感、魂が震えるような熱さとクールなユーモア、これこそ正しきロックの姿として永遠に色あせない名盤だ。何度でも言うが、わたしにとって、これ以上のロック・アルバムは存在しない。
『ロンドン・コーリング』(1979)
The Clash “London Calling”
70年代の最後を締め括ったのはLP2枚組でリリースされたクラッシュの3rdアルバムだ。
1stもパンク・アルバムの大傑作だったが、たった2年の間に飛躍的な進化を遂げ、レゲエやダブを中心に豊かな音楽性を手中にした彼らの代表作だ。もはや「パンクの名盤」ではなく、「ロックの歴史的名盤」となった。
パンク・ムーヴメントがただの時代の徒花ではなく、新たなロックの世界を切り拓いた歴史的変革だったことを証明したのだ。
以上、1970年代ロックの【必聴究極名盤10選】でした。
(Goro)