【夜のロック】
Tom Waits
(Looking For) The Heart Of Saturday Night (1973)
Tom Waits
(Looking For) The Heart Of Saturday Night (1973)
トム・ウェイツの2ndアルバム『土曜日の夜』のタイトル曲。アルバムは、ジャズ・ミュージシャンたちを起用し、よりジャズ色の強いアルバムとなっている。
土曜の夜の街で恋の相手を探して、一緒にドライヴすることを夢想しながら車を走らせる、孤独な男の歌だ。
若い頃のトム自身のことを歌ったのかもしれないし、もしかすると若い頃のわたしのことを歌っているのかもしれない。
トム・ウェイツは母子家庭で育ち、高校中退して16歳からピザ屋で働いた。なんだかわたしと同じような境遇なので、親近感が湧く。その後は全然違うけれども。
トムがいつも歌うのは、夜の街で働いていたり、なけなしの金とささやかな幸福だけで細々と生き、持て余すほどの苦悩や哀しみをなにかで紛らわしながら、なにになれることもなく生涯を終えるだろう、市井の人々だ。
わたしのような。
若くて、滾る欲動をなんとか宥めながら、少し前かがみになって、夜の街をさまよったのも、遥か遠い昔のことだけれども。
Tom Waits – "(Looking For) The Heart Of Saturday Night"
(Goro)