ザ・フー『ライヴ・アット・リーズ』(1970)【最強ロック名盤500】#152

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【最強ロック名盤500】#152
The Who
“Live at Leeds” (1970)

ザ・フーは奇天烈なバンドである。

まず名前がヘンだ。
1965年という時代に、こんな奇天烈な名前では売れないだろうと考えるのが自然だろう。

でも彼らは売れた。
売れさえすれば、変テコと思われていた名前が、最高にカッコいい名前に思えてくるから不思議なものだ。

ソングライターのピート・タウンゼントはインテリで、音楽的な素養も文学的な知識も備えていた。彼は、巧みで新鮮で、スパイスの効いたポップ・ソングが書けた。

ザ・フーの音楽には社会に対する問題意識とユーモアのセンスも備わっていた。
そのうえまともな人間が誰もやらなかった変なこともやりまくって、ロック界に多大な影響を及ぼした。

わたしはこのブログでも何度か書いているが、ロックはもちろんのこと、すべての芸術において、ユーモアのセンスのないアーティストは二流かせいぜい一流半だと思っている。別にコミックバンドがいいわけじゃない。センスの問題だ。その点で言うと、ザ・フーは超一流のアーティストだ。

本作は1970年5月にリリースされた、ザ・フー初のライヴ・アルバムだ。1970年2月に行われた英ウエスト・ヨークシャー州のリーズ大学でのライヴの模様が収録されている。

当日のライヴは、中間で『トミー』全曲を演奏するという試みがされた、2時間を超える内容だったが、本作ではその『トミー』全曲部分は賢くも全カットされ、6曲だけが厳選されて収録されている。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ヤング・マン・ブルース
2 恋のピンチヒッター
3 サマータイム・ブルース
4 シェイキン・オール・オーヴァー

SIDE B

1 マイ・ジェネレーション
2 マジック・バス

ザ・フーのお茶目でユーモアたっぷりの表情はここでは封印され、本気を丸出しにしたような、ザ・フーのアルバムの中でもズバ抜けてハードで凄みのある名演となっている。

長尺の「マイ・ジェネレーション」以外はすべてオリジナル・アルバム未収録曲という選曲がまたいい。本作は全英3位、全米4位とセールス面でも大成功した。

それにしても、この記事を書くために調べていてわかったのだけれども、現在は1995年に発売された14曲入りのバージョンと、2001年発売の『トミー』全曲も含む33曲入り完全版のCDしか販売されておらず、オリジナルのこの6曲入りのものは、どうやら過去の遺物として葬られてしまったようなのである。サブスクにさえ存在しない。

残念な話である。

どれと比べても、やはりオリジナルの6曲版が圧倒的に素晴らしいのだ。

あの緊張感と凄みは、6曲に厳選された編集によって生みだされたものだということがあらためてわかる。そもそも実際のライヴをありのままに伝えることを目的としたものではなく、ライヴの素材を使って作り上げた、6曲36分のオリジナル・アルバムと捉えるべきなのだ。

収録曲なんて多ければ多いほどいいなんていう考え方は、どうにも貧乏性的だ。たくさん入っているばっかりに選曲による化学反応が失われ、緊張感も凄みも感動も薄くなるというデメリットだってあるのだ。

現実の家計のことで言えばしっかり貧乏なわたしでも、音楽や芸術の楽しみ方ぐらいは貧乏性になりたくはないものである。

↓ アルバム冒頭を飾る「ヤング・マン・ブルース」。ジャズ・アーティストのモーズ・アリソンが1957年にリリースした曲のカバーだ。いきなりシビれる。

↓ エディ・コクランの代表曲のカバー。シングル・カットされて全米27位のヒットとなった。原曲超えとも言っても言い過ぎではない、数ある「サマータイム・ブルース」の中でも最高のカバーだ。

(Goro)

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