【100グレイテスト・ソングス】#100
The Rolling Stones – Tell Me
1stアルバム『ザ・ローリング・ストーンズ』の収録曲の中で唯一のオリジナル曲であり、ジャガー&リチャーズが初めて書いた曲でもある。アメリカでシングル・カットされて、全米24位まで上がるヒットとなった。
日本でもシングル発売され、この曲からローリング・ストーンズの名前が知られるようになったという。
黒人アーティストのブルースやロックロールのカバーで占められた1stアルバムの中で、この曲だけが異彩を放っている。
ローリング・ストーンズはそもそも、「世界一のR&Bバンドになる」という目標で始められたバンドで、ブルースやR&Bなら他の英国のバンドとは比較にならないほど上手かった。
しかしいざオリジナルを創作してみると、出てきたものはブルースやR&Bではなく、こんなポップな曲だった。
ミックもキースも実際は黒人音楽だけを聴いていたわけではなく、エルヴィスやバディ・ホリー、エディ・コクランによって音楽に目覚め、この当時もエヴァリー・ブラザーズと一緒にツアーをしたり、ボブ・ディランを聴いたりしていたのだ。
そんな、白人の音楽も黒人の音楽も分け隔てなく貪欲に吸収した彼らの豊かな感性から生まれたのが、人種の壁を崩壊させることになる、新時代の《ロック》だったのだろう。
もしも彼らがブルースしか書けなかったら、ストーンズは60年代で終わっていたに違いない。
ポップ・ソングもロックンロールも、最新流行の音楽もルーツ・ミュージックも、黒人の音楽も白人の音楽も、すべて飲み込んで消化し、自分たちの音楽として新たに創造できる才能があったからこそ、あれほどのビッグ・バンドになり得たのだろう。
わたしは十代の頃にストーンズに出会ったおかげで、幅広いジャンル、幅広い時代の音楽を聴けるようになれたと思う。そしてロックの底無しに深い面白さと快楽を知り、傍から見るほど悪くない、楽しい人生を送ることが出来た。
ストーンズにはどれだけ感謝しても足りないだろう。
ザ・ローリング・ストーンズ【100グレイテスト・ソングス】は、これにて完結です。
拙筆・駄文を忍耐強く読み続けてくれた、ストーンズ愛が凄すぎるみなさん、本当にどうもありがとうございました。