『スティル・ライフ(アメリカンコンサート ’81)』(1982)
The Rolling Stones
わたしがストーンズのレコードを初めて聴いたのが、当時の最新盤だったこのアルバムだった。わたしは16歳で、当時やっと地元の街にひとつだけ出来た「貸しレコード屋」でレンタルし、カセットテープにダビングして繰り返し聴いた。自分でストーンズのレコードを買うようになるのはその1年後のことだ。
ストーンズのそれまでのライヴ・アルバムに比べるとサウンドが薄いとか、ストーンズにしては健康的すぎるなどといった批判を当時は浴びたそうだが、何しろわたしはこれが初めてのストーンズだったので、まったくそんなことは思わず、カッコいいロックンロール・ライヴだと思った。
だから今でもこのライヴが好きだ。10曲に厳選されているのもいい。『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』『ラヴ・ユー・ライヴ』と曲が被らないように選んだ結果なのか、やや地味目の選曲もいい。10曲しかないのに4曲がカバーというのもいい。10曲しかなくても、聴き終える頃には大満足な一枚だ。
SIDE A
- アンダー・マイ・サム – Under My Thumb
- 夜をぶっとばせ – Let’s Spend The Night Together
- シャッタード – Shatterd
- トゥエンティ・フライト・ロック – Twenty Flight Rock (エディ・コクランのカバー)
- ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー – Going To A Go Go (スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカバー)
SIDE B
- レット・ミー・ゴー – Let Me Go
- タイム・イズ・オン・マイ・サイド – Time Is On My Side (アーマ・トーマスのカバー)
- ジャスト・マイ・イマジネーション – Just My Imagination (テンプテーションズのカバー)
- スタート・ミー・アップ – Start Me Up
- サティスファクション – (I Can’t Get No)Satisfaction
ストーンズのライヴの歴代のオープニング・ナンバーの中でも、この81年のときの「アンダー・マイ・サム」がわたしはいちばん好きだ。
このときのアメリカツアーの模様は『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー 夜をぶっとばせ』というタイトルで映画化もされ、日本でも1983年に公開された。上の動画はその映画からのものだ。
それまでのストーンズのライヴ映像と言えば当然ながらミックを中心に撮られていたものだが、この映画では監督の意図なのか、驚くほど高い割合でキースが映し出されている印象である。ミックを中心とした構成であることは間違いないが、その横で映り込むキースの存在感とカッコ良さが目立ってしょうがないのだ。
キースは「カッコいいギタリストのイメージを確立した男」とも言われているが、この映画はそのイメージの確立に大きく貢献しているのではないかと思う。2曲目の「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」では、それほどギターが活躍する曲でもないのに、ほぼ最初から最後までキースが映像の中心になっている。
本作からは「ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー」がシングル・カットされ、全米26位、全英25位のヒットとなった。
「みんなでゴー・ゴーへ行って踊ろうぜ!」と歌うこの曲のストーンズ・バージョンは、スモーキー・ロビンソンによる元のアレンジは尊重しながらも、ストーンズらしいキレ味の良いギターや、クールなドラムがカッコいい。
「トウェンティ・フライト・ロック」もシビれるような演奏だし、「シャッタード」や「レット・ミー・ゴー」の疾走感もカッコ良い。
アメリカで初めてストーンズがブレイクしたナンバー「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」にアメリカ人が熱狂しているのはなんだか胸が熱くなる。
そして「スタート・ミー・アップ」でこのアルバムのクライマックスに突入する。ラストの「サティスファクション」の演奏は最高だ。オリジナルよりもずっとカッコいい。
ストーンズに最初に出会い、何度も繰り返し聴いたレコードという意味で、いちばん思い入れが深く、いちばん好きなライヴ・アルバムだ。今、聴き返してみて、あらためてそう思った。2009年のリマスターのせいもあってか、サウンドにも不満はない。健康的なストーンズもまた良しだ。
本作は全米5位、全英4位を記録した。
(Goro)