【100グレイテスト・ソングス】#78
The Rolling Stones – Highwire
1991年1月に録音、3月に発売されたシングル。翌月発表のライヴ・アルバム『フラッシュポイント』にもボーナス・トラック的に収録された。
1991年の1月と言えば、クウェートに侵攻したイラクに対し、アメリカを中心とする多国籍軍が空爆を開始した,いわゆる〈湾岸戦争〉がおっぱじまった月だ。
これに(たぶんミックが)触発されて書かれた曲ということらしい。
ストーンズは直接的な反戦歌や、政治批判を曲にすることはほとんどない。
この曲もまた、反戦歌というよりは、「綱渡り(highwire)」のような危なっかしい状況を生み出しているわれわれ現代人の生き方について歌われている。以下はわたしの意訳。
ミサイルや戦車を売るのもただのビジネスだ
プライドなんてない、だれのブーツでも舐める
おれたちはとことん欲が深く、病気みたいなもんだおれたちは綱渡りをしてる
そして男たちを戦場に送ることになるんだ
彼らが冷たいウソによって熱い銃を握らされ
地獄の炎に包まれないことを願っている
湾岸戦争は、イラクが80年代の戦争中にアメリカやイギリスやソ連や中国などに対して作った借金の厳しい取り立てと、石油の値下がりや奪い合いを巡るイザコザにブチ切れたことから始まった戦争だっだ。
その安い石油のおかげでわれわれは文明の繁栄を享受していた。バブル時代の話である。
われわれの生き方が巡り巡って遠くペルシャ湾で戦争を生み出し、同時にわれわれの石油を掘り尽くし燃やし尽くす生き方は、地球を破壊しかねないライフスタイルだった。
わたしは以前の仕事で、毎月膨大な数の娯楽用プラスチック製品を仕入れて客に提供した。それでわたしと同僚たちが毎日ご飯を食べたり、デートしたり、子供を養うことが出来た。
今は仕事が変わり、朝から晩まで、直接吸ったら即死するほど毒性の高い「排気ガス」というものを撒き散らしている。
そしてやっぱり、優しい動物たちや美しい植物たちを毎日貪り喰らっている。
わたしが地球を破壊する一端を担っているのは十分理解しているけど、それをやめないのは、ただ単に自分が生きて、子孫を育て、毎日ちょこっとだけなにかしら楽しむためのお金ちゃんが欲しいためだ。
これをずっとしている。
病気みたいなものだ。
こんなわたしが使うガソリンのために、現在新たな危機が勃発する地域へ、石油を買いに行く人々がいる。
彼らがそこへ行かなければ、われわれは石油が手に入らなくて、破滅してしまうというわけだ。
石油を運ぶのをやめろ、なんて言わない。言えるわけがない。
でもせめて、せめて石油を運ぶ彼らに身の危険が及ばないよう、強い護衛をつけてあげて、ということしかわたしには願うことが出来ない。
こんな犯罪的な日々を送るわたしに世の中のなにも批判する資格は無いと重々承知しながら、このストーンズの歌にこっそり共感している。