レディオヘッド/クリープ (1992)

【90年代ロックの快楽】
Radiohead
Creep (1992)

わたしは過去にニートや引きこもりだったことはないけど、なぜかそっち側の世界の人間のような気がしている。ずっと昔から。

自分だってひとつ間違えばそうだったかもしれないという気もするし、いっぱしの社会人やってるように見せかけているけど、それが自分の本来の姿なのかどうかよくわからない、という気持ちが常にあった。

たったの15歳で社会に飛び込んでしまったものの、その社会とやらの素顔は、よそよそしくて、寛容なふりはしているけど実は心の底では厳しい目で見ていて、何を考えているのかわからない人たちの世界だった。自分の居場所がその社会のどこかにあるなんてとても思えなかった。

わたしはそんな彼らとどう接すればいいのかわからず、ついこのあいだまで学校で天真爛漫にはしゃいでいた少年も、次第に無口になっていった。

レディオヘッドの音楽はそんな精神的引きこもりのためのサウンドトラックみたいだと思ってわたしは聴いた。

この「クリープ」はそんなレディオヘッドの原点と言える。

1992年9月にデビュー・シングルとしてリリースされ、全英7位、全米34位まで上昇し、彼らにとって最大のヒット曲となっている。

僕はただのキモい、クズみたいなやつだ
ここは僕なんかがいちゃいけない世界なのかもしれない
完璧なカラダ、完璧な精神がほしい
いてもいなくてもいいような、どうでもいい存在なんかでいたくない

(written by Radiohead, Albert Hammond, Mike Hazlewood)

「クリープ」は衝撃的だった。

当時わたしはもういい大人だったくせに、心の奥底にしまい込んであった、劣等感にまみれて途方に暮れた15歳部分が激しく反応してしまった。

その後ずいぶん経って、仕事も順調で家族にも恵まれ、すっかりちゃんとした大人になったわたしは、社会の中に居場所を持ったはずだったけれども、しかしレディオヘッドの音楽を聴いていると、それがなんだか、いつ暴かれるかもわからない仮の姿のようにも思えたものだ。本当は15歳の頃から何も変わってないんじゃないかと自問して、ゾッとしたものだ。

2003年のサマーソニックに彼らが出演した際、アンコールでこの曲が演奏されると大いに盛り上がり、観客が大合唱している映像を見たことがある。日本にはわたしと同じように、「クズみたいなやつ」に共感するやつらがたくさんいるなあ、と嬉しくなったものだ。

わたしは今でも、レディオヘッドではこの曲が一番好きだ。

Radiohead – Creep

(Goro)