さて後編では、1996年~97年にリリースされたブリット・ポップの名曲・代表曲を紹介していきたいと思います。
Northern Uproar – From A Window
グレーター・マンチェスター出身のバンドで、当時平均年齢17歳だった彼らは、ビッグマウスでお行儀が悪く、オアシスの舎弟みたいなイメージだった。
この曲は1stアルバムからのシングルで、全英14位のヒットとなった。
勢いがあって、パンクでポップ、プロデューサーはマニック・ストリート・プリーチャーズのジェームス・ディーン・ブラッドフィールドだ。
Bluetones – Slight Returns
ロンドン出身の4人組で、この曲は3rdシングルとしてリリースされ、全英2位と大ヒットした。
1stアルバムは、当時世界的な大ヒットを記録していたオアシスの『モーニング・グローリー』を蹴落として1位になったことでも話題となり、ブリット・ポップ・ブームの中でデビューした新人としては最も注目を集めたバンドのひとつだった。わたしは当時も今も、なぜかピンと来ないバンドだけれども。
Super Furry Animals – Something 4 the Weekend
ウェールズ出身の5人組で、この曲は1stアルバムからのシングルで、全英18位のヒットとなった。まるでビートルズのようなポップな楽曲だ。
96年の初来日時の名古屋公演では観客がわずか14人という洋楽ロック史上に残る伝説を残したそうだが、ブームの終焉と共に消えていったバンドも多かった中、彼らは逆にアルバムをリリースするたびにセールスを伸ばしながら、安定した活動を行い、現在までに9枚のアルバムを発表している。
Ocean Colour Scene – The Riverboat Song
92年発表の1stアルバムはまったく売れなかったが、それから4年後にリリースした2ndアルバムはブリット・ポップ・ブームの波に乗り、全英2位の大ヒットを記録した。
その突然の大ブレイクは、BBCのDJがこの「ザ・リヴァーボート・ソング」を気に入って繰り返しオンエアしたことがきっかけだったらしい。
まるで60年代末頃のブリティッシュ・ロックを思わせる、ブリット・ポップのドングリやタケノコたちとはちょっと次元の違うカッコ良さだ。
Lush – Ladykillers
1990年にデビューした男女2名ずつの4人組、ラッシュは当初ドリーミィでシューゲイザー的なアプローチでデビューした。
96年発表の3rdはブリット・ポップ的なアプローチで好評を博し、前作よりもセールスを伸ばして全英8位のヒットとなった。
わたしはデビュー当時から聴いていたけれど、ブリット・ポップ的なアプローチになって断然良くなったと思う。
The Longpigs – On And On
イングランド・シェフィールド出身で、95年にデビュー。
この曲はグランジ的なサウンドと印象的なメロディのバラードで、全英16位と彼らにとって最高位となるヒットとなった。
ロバート・カーライル主演でブラーのデーモンも出演したイギリス映画『フェイス』にも使用された。
Shed Seven – Going For Gold
ちょうどオアシスと同時期にデビューしたシェッド・セヴンは、当時オアシスのライバル的な扱いだった。
この曲は2ndアルバム『マキシマム・ハイ(A Maximum High)』からのシングルで、全英8位と彼らにとって最大のヒットとなった。
歌い方とメロディはどことなくオアシスに似ていなくもない。
Manic Street Preachers – A Design For Life
マニック・ストリート・プリーチャーズの4枚目のアルバム『エヴリシング・マスト・ゴー』からのシングルで、全英2位となった大ヒット曲。
苦労して働いてもなかなか豊かにはなれないけど、労働には価値があり、節約しながらでも人生をしっかりと生き抜くんだと、市井の労働者たちの心情をリアルに歌った曲。
この曲は、何度聴いても泣けてくる。こんな曲を書いたジェームスを、ソングライターとしても、人間としても尊敬する。
Suede – Trash
実は92年にスウェードがデビューしたときにブリット・ポップは始まったとも言える。しかし後に続く者が無くて、ムーヴメントにはならなかった。スウェードは早すぎたのだ。
この曲は3rdアルバム『カミング・アップ(Coming Up)』からのシングルで、全英3位の大ヒットとなった。
1度聴いたら1日中口づさんでしまうようなキャッチーなメロディはさすがだ。
PVの、クールに歌うブレット・アンダーソンのカッコ良さにシビれる。
Dodgy – Good Enough
ロンドン出身のバンド、ドッジーはいかにも王道英国ロックらしい、ポップで親しみやすいメロディーと聴きやすいサウンドが特長だ。
この曲は3rdアルバム『フリー・ピース・スウィート』からのシングルで、全英4位と、彼らにとって最大のヒットとなった。
Kula Shaker – Hey Dude
ロンドン出身のバンド、クーラ・シェイカーの登場も、ブリット・ポップ期の大きな事件のひとつだった。
ギターを中心にしたその疾走感のある独特のグルーヴは思わず「おおっ」と食いつかせるフックを持ち、インド音楽とサイケデリックの要素も加えた音楽性は強い個性で輝いていた。
1stアルバム『K』は全英1位となり、オアシスが持っていたデビュー・アルバムの売上記録を塗り替えるほどのロケット・スタートとなった。アルバムからのシングルであるこの「ヘイ、デュード」も全英チャート2位の大ヒットとなった。
Mansun – Wide Open Space
ブリット・ポップ末期に滑り込みでデビューしたマンサンは、1stアルバムが全英1位となり、音楽誌で「オアシス以来最高のデビューアルバム」と絶賛された。
この曲はその1stアルバムからのシングルで、耽美的な80年代のニューウェイヴを彷彿とさせるようなアプローチで、全英15位のヒットとなった。
Hurricane #1 – Step Into My World
ハリケーン#1(ハリケーン・ナンバーワンと読む)は、90年代初頭に活躍したシューゲイザーの代表的なバンド、ライドのギタリスト、アンディ・ベルがライド解散後に結成したバンドだ。この曲は1stアルバムからのシングルで、全英29位となった。
ライドのときには書いていなかった、じんわり沁みる泣きメロがいい。
The Verve – Bitter Sweet Symphony
ブリット・ポップ!30組30曲のラストはこの名曲。ブリット・ポップの閉幕は、この世界的大ヒット曲によって締めくくられたのだ。
ザ・ヴァーヴの3rdアルバム『アーバン・ヒムズ』からのシングルで、全英2位、全米12位のヒットとなり、アルバムはなんと12週間のあいだ全英1位に留まった。
日本でもヒットしてTV番組などにも使われたので、タイトルは知らなくても、あの印象的なストリングスのリフレインを聴けば「ああ、これか!」とわかる人も多いに違いない。
以上、ブリット・ポップ!【30組30曲】〈後編1996~97〉でした。
時代の徒花たちが咲き乱れるようなロック・ムーヴメントはやっぱり楽しい。
ホンモノの天才もいれば、ただ活きが良くてガチヤガチャしてるだけのやつもいるし、カッコいいやつもいればダサいやつもいて、可愛らしいやつもいれば憎たらしいやつもいる。そんななんでもありの玉石混淆の百花繚乱こそがロックという音楽の面白さだと思う。
若い頃にそういうムーヴメントを運良く体験できるのとできないのでは、きっとロックへのハマりかたも違うだろう。わたしは90年代ロックの大嵐に巻き込まれて深みにハマったのだった。
またいつか、新たなロック・ムーヴメントが生まれるだろうか。
生まれるといいな、としか言いようがないけれども。
(by goro)