1950年にデビューした米ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のファッツ・ドミノは、ロックンロール・オリジネイターのひとりだ。
彼はその愛くるしい見た目そのままの温かい音楽で、老若男女、黒人・白人区別なく愛された。そのでっかい手で鍵盤をパーカッションのように叩きながら、ミリオンセラーを22曲もぶっ放し、独創的なロックンロールとニューオーリンズR&Bを世界に広めた、。
この人の歌っている姿を見ると実にほっこりした気持になったものだった。たぶんそんなロックスターは他にいない。あの、人の良さが滲み出たような温かい歌声と、ゆっくりと散歩するような三連符のニューオーリンズR&Bが大好きだった。
2017年10月24日に89歳でこの世を去ったが、彼は最後までニューオーリンズの地を離れることはなかったという。これからもずっと、ニューオーリンズと言えば、彼の愛らしい笑顔と素晴らしい音楽が想い出され、永久に忘れられることはないだろう。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきファッツ・ドミノの至極の名曲5選です。
Ain’t That a Shame
ファッツ・ドミノの1stアルバム『ロック・アンド・ローリン・ウィズ・ファッツ・ドミノ』からのシングルで、全米10位、全英23位のスマッシュ・ヒットとなった出世作にして代表曲。
ジョン・レノンやチープ・トリックをはじめ、数多くのカバー・バージョンが生まれているが、あらためてオリジナルを聴くとやはりその素晴らしさは圧倒的だ。
I’m in Love Again
この曲も「エイント・ザット・シェイム」と同じく、長年にわたってファッツ・ドミノのプロデューサーを務め、共に曲を書いたデイヴ・バーソロミューとの共作。
全米3位、全英12位の大ヒットとなった。
Blueberry Hill
全米2位、全英6位の大ヒットとなったファッツ・ドミノの代表曲であり、わたしも一番好きな曲だ。オリジナルはカントリー・シンガーのジーン・オートリーが1941年に歌ったもの。
ブルーベリー・ヒルで共に過ごした、別れた恋人のことを想い「きみはもうここにいないけれど、おれの心には君がいる。ブルーベリー・ヒルで暮らしていた頃は、いつも胸がときめいていたから」と歌うせつない曲だ。
I’m Walkin’
全米4位、全英19位のヒット曲。ファッツ・ドミノにはゆっくり歩きながら聴きたくなるような曲が多いが、この曲はブギウギ調で、ウォーキンというよりは競歩ぐらいのスピード感だ。
ファッツが車で事故を起こした直後で、歩いているときにファンに声をかけられたのがきっかけで思いついた曲だという。
Walking to New Orleans
これも歩く曲だが、書いたのはボビー・チャールズというシンガー・ソング・ライターで、全米6位、全英19位のヒットとなった。
チャールズはファッツ・ドミノの大ファンだったが、ファッツが彼の別の曲を歌ったのが縁で、ファッツの自宅に招待された。しかしチャールズは車を持っていなかったために歩いてニューオーリンズのファッツの家まで行き、その途中で思いついた曲がこの曲だったという。
ファッツの家に着いてこの曲をピアノを弾きながら歌って見せると、ファッツは大いに気に入ったそうだ。
入門用にファッツ・ドミノのアルバムを最初に聴くなら、やはりベスト盤がお薦め。
最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
まあ、ここで選んだ5曲はどんなベスト盤にでも入っているので、ベスト盤ならどれでもいいとは思うけれども。
(Goro)