Cyndi Lauper
Money Changes Everything (1983)
わたしが突然雷にでも撃たれて、1980年代という過去にタイムスリップしたとして、目が覚めた瞬間に聴こえてくる音楽はこの「マネーチェンジ・エヴリシング」のイントロであってほしい。「ああ、ここは80年代なのか」とわたしは一瞬で理解するだろう。
それぐらいわたしにとっては80年代を象徴する1曲だ、ということをやや遠回りに例えてしまったが、シンディ・ローパーの名盤1stアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル(She’s So Unusual)』のオープニング・トラックである。
「わたしたちは今日でお別れよ。たしかに永遠の愛を誓ったけれど、あのときは考えてなかったことがあったの。それはお金のこと。お金はすべてを変えるのよ」
この曲はそんな、金の切れ目は縁の切れ目的なえらく率直なラヴソングで、いかにも物質主義の80年代らしい歌詞と言えるが、しかし当時は知らずに聴いていたけれども、実はこの曲はオリジナルではなく、カバーだったのだ。
原曲は米ジョージア州出身のニューウェイヴ・バンド、ザ・ブレインズ(The Brains)で、リード・ヴォーカル兼キーボードを務めるトム・グレイの作だ。彼らが1980年に発表した1stアルバムに収録されている。
ザ・ブレインズの粗削りなオリジナルも嫌いじゃないが、でもやっぱりあの四角い口で歌うシンディのバージョンは個性の輝きが圧倒的だ。そしてサウンドには、あの時代の空気が横溢している。
バックバンドを務めたザ・フーターズによるサウンドと上手く融合した、シンセによるイントロは、新時代のポップスの幕開けを感じさせたものだった。
この懐かしいイントロを聴くと、一気にあの時代に連れ戻される気分になる。
↓ ザ・ブレインズのオリジナル。
(Goro)