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Blondie
“Parallel Lines” (1978)
ブロンディは、ラジオから流れてくるのがよく似合う。
わたしの少年時代、というと昭和の話だが、土曜のお昼にFMラジオで歌謡曲のチャート番組「コーセー歌謡ベストテン」と洋楽のチャート番組「ポップス・ベストテン」を続けて聴くのを何よりの楽しみにしていた。小学校高学年の頃、身も心もグイグイと成長する、あれこれとたまらない頃だ。
わたしにとっての洋楽体験の最初期は、そんなラジオ番組でよく流れていたブロンディやアバ、チープ・トリック、クイーンなどのヒット曲だった。
当時の『月刊明星』というアイドル誌には歌本が付録で付いていて、わたしはそれを目当てに毎月買っていたのだけれども、その歌本には後ろのほうに洋楽もちょこっとだけ載っていた。英語の歌詞にカタカナが振ってあって、わたしはラジオに合わせてブロンディの「サンデー・ガール」なんかをカタカナで一生懸命歌っていたことを憶えている。
初期のブロンディは、ラモーンズやテレヴィジョン、トーキング・ヘッズなどと同じCBGBというニューヨークのライブハウスに出演していたことで、いちおうN.Y.パンクの一味ということになっていたものだが、当時まだ小学生であったわたしはそんなことは知る由もない。雑誌で見た、なんかスケベそうなネエちゃんがいる、ヒット曲を連発するバンドというイメージしかなかった。
ブロンディには50~60年代のヒットパレードの甘酸っぱい香りがする。
ブロンディの音楽はパンク・ロックではなかったが、しかし「原点回帰」という方向性はパンクの連中と同じ方向を向いていたわけで、わたしはラモーンズもブロンディもそんなに変わらないと思っている。
デビュー当初はラモーンズと同じくらい売れなかったブロンディが、しかし1978年9月にリリースした3rdアルバム『恋の平行線』で大ブレイクする。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ハンギング・オン・ザ・テレフォン(全英5位)
2 どうせ恋だから(全米24位)
3 恋のピクチャー(全英12位)
4 フェイド・アウェイ
5 プリティ・ベイビー
6 知ってるかい?
SIDE B
1 11:59
2 どうなるかしら?
3 サンデー・ガール(全英1位)
4 ハート・オブ・グラス(全米1位、全英1位)
5 好きになりそう
6 ジャスト・ゴー・アウェイ
ディスコ・ビートを取り入れたB4「ハート・オブ・グラス」が世界的ヒットとなり、その勢いに乗ってシングル・ヒットを連発し、アルバムは全米6位、全英1位のミリオンセラーとなった。⇨ブロンディ/ハートオブ・グラスの記事はこちら
B3「サンデー・ガール」やA3「恋のピクチャー」なんかも60年代のヒットポップスの香りがしてわたしの好物でもあるけれども、A2「どうせ恋だから」のような、もともと彼らはCBGBという決して行儀の良くないところで育ったことを思い出させるような曲もまたよく似合っているのだ。
ブロンディがポップ路線に転換して成功を収めたのは、本作からプロデューサーを務めたマイク・チャップマンの功績が大きいようだ。
デボラ・ハリーは後にこう語っている。
「マイク・チャップマンが”ポップの作り方”を教えてくれた。彼なしで”Parallel Lines”は生まれなかった」(BBC Radio 2 ドキュメンタリー『Blondie: The Platinum Collection』2001年)。
そのマイク・チャップマンはこう語っている。
「僕が狙ったのは“ABBAとラモーンズの出会い”みたいなサウンドだった」(アンカット誌インタビュー 2016年)
アバとラモーンズか。
どうりでわたしが好きなわけだ。
↓ 全米24位まで上昇した「どうせ恋だから」。デボラ・ハリーの蓮っ葉で下品なヴォーカルが素晴らしい。
↓ 全英1位となった、60年代ポップス風の「サンデー・ガール」。
(Goro)