The Byrds
Chimes of Freedom (1956)
もしかするとボブ・ディランは、史上最もカバーされたアーティストなんじゃないかと思う(知らんけど)。
そんなディランのカバーのお手本を示したのが、ザ・バーズだった。
当時の英米のポップカルチャーの最先端であるボブ・ディランとビートルズを融合させた音楽性は、それまでなかった聴き心地の良いクールなサウンドと文学的な歌詞で、ロックに新たな深みを与えることに成功した。
ディランのカバーは、原曲がシンプルな弾き語りである場合が最も効果が高い。このカバーもまたそんな曲だ。
このカバーはバーズが1965年6月に発表した1stアルバム『ミスター・タンブリンマン』に収録されている。
原曲はディランの1964年8月発表の4thアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』に収録されている。
バーズは3拍子をエイトビートに変え、印象的なコーラスと聴きやすいフォーク・ロック・サウンドで見事なポップソングに変身させた。
ロジャー・マッギンの歌い方はディランのしょっぱい感じを残していて、甘味が多すぎないのがまた良いのだ。
ディランのこの全曲弾き語りのアルバムからバーズは他にも「オール・アイ・リアリー・ウォント」「スパニッシユ・ハーレム・インシデント」「マイ・バック・ペイジズ」をカバーしている。どれも素晴らしい出来栄えだ。
この時期のディランの弾き語り曲は、われわれのようなすでにロックに慣れた耳にはやや地味で晦渋でもあったりするのだけれど、正直バーズがカバーしてくれたおかげで、実はディランの曲はメロディも豊かで、ポップな魅力さえあることも気づいた。
わたしはバーズを聴く以前に『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』を聴いていて、正直、あまりピンと来ていなかったのだけれど、バーズの数々のカバーを聴いてからあらためて聴き直すと、こりゃなかなかの名盤ではないか、と思うようにさえなったものだった。
ぶっちゃけ、わたしがボブ・ディランの楽曲の面白さや奥深さに気づいたのはバーズのおかげだと言っても過言ではないのだ。
↓ ザ・バーズのバージョン。
↓ ボブ・ディランのオリジナル・バージョン。
↓ こちらはブルース・スプリングスティーンによるカバー。1988年の欧州ツアーでのライヴ録音で、88年の8月に『Chimes Of Freedom』のタイトルで4曲入りのEPとしてリリースされた。バーズとはまた違ったアプローチの、ドラマチックなアレンジだ。
(Goro)