⭐️⭐️⭐️
Black Sabbath
“Vol.4” (1972)
初めての米国、ロサンゼルスでの録音、そして1stからプロデューサーを務めてきたロジャー・ペインをはずし、ギターのトニー・アイオミが主にプロデューサーを務め、スタジオをコカインの粉だらけにしながら制作されたアルバムだった。
『vol.4』なんてやけに素っ気ないタイトルだが、もともとは収録曲にもある『Snowblind』というタイトルになるはずだった。しかしそのタイトルが明らかに摂取したコカインの量にちなんでいることから、バンドが休暇をとっている隙にレコード会社が勝手に変更して発売したという。
アルバムは1972年9月にリリースされ、全英8位、全米13位のヒットとなった。作曲はメンバー全員で行い、作詞はベーシストのギーザー・バトラーが務めている。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ウィールス・オブ・コンフュージョン
2 トゥモロウズ・ドリームス
3 チェンジス
4 FX
5 スーパーナート
SIDE B
1 スノウブラインド
2 コーニュコウピア
3 ラグナ・サンライズ
4 セント・ヴァイタス・ダンス
5 アンダー・ザ・サン
本作のハイライトは、ジョン・ボーナムやフランク・ザッパ、ベックなどが「最高のリフ」に挙げるA5「スーパーナート」だろう。わたしもこの曲がいちばん好きだ。
重量感のあるギターリフとベースが、凶暴な暴れ牛がのっそりと牛歩したり、猛り狂って駆け回ったりするようなA1「ウィールス・オブ・コンフュージョン」やB5「アンダー・ザ・サン」、ドライヴ感のあるA2「トゥモロウズ・ドリーム」や、B4「セイント・ヴァイタス・ダンス」はブラック・サバスらしいヘヴィで豪快な魅力を放っている。
一方でピアノとメロトロンの伴奏による美しくも物哀しいバラードA3「チェンジス」やアコギをメインにしたインストB3「ラグナ・サンライズ」などの異色の曲も印象的だ。こういうのが入っているのがまた楽しくもある。
ヘヴィ・メタルにもいろいろあるけれども、達者な演奏をする「技術力で勝負」みたいな大人のバンドよりも、ブラック・サバスのような、ラフでラウドでガキっぽく、遊んでるみたいにロックをやる連中がわたしは好きだ。
メロトロンやストリングスを入れてみたりというのも単なる思いつきのように思えるし(しかしセンスのある思いつきだが)、A4「FX」などは、トニー・アイオミが首からぶら下げていた十字架がギターの弦に当たって妙な音を出すのを面白がって、いろんなものを弦にあててエコーをかけただけの、子供の遊びみたいなトラックだ。
それでもアイオミのギターが力強いリフを刻み、ベースが絡んでさらに重量を加えると、わたしのお気に入りのブラック・サバスの猛攻が始まり、体内の血液は俄然温度を上げて勢いよく流れる出すのである。歌メロはなんとなくテキトーに歌っていてくれればいい。オジーの声は純粋で孤独な少年の声のようで、聴いていて心安らぐ声だ。
たぶんわたしは、ブラック・サバスの音楽を、1990年代のグランジ・ロックを思い出しながら聴いているのだろう。わたしはオルタナのほうを先に聴いていて、サバスのほうは最近まとめて聴いているので、わたしには「懐かしく」聴こえるのだ。
↓ リフが強烈な印象を残す「スーパーナート」。
↓ 本作の制作中に吸いまくったコカインについて歌った「スノウブラインド」。ジャケットには「偉大なコカイン・カンパニーに感謝したい」と記されている。
(Goro)