⭐️⭐️⭐️
Uriah Heep
“Look at Yourself” (1971)
ユーライア・ヒープは1970年にデビューしたイギリスのハード・ロック・バンドだ。キーボードとコーラスを駆使した嵐のように賑やかなサウンドが特長のバンドである。
当時はハード・ロック草創期で、日本ではレッド・ツェッペリン、ディープ・パープルと、このユーライア・ヒープが「三大ハード・ロック・バンド」と括られて大変人気だったらしい。
若いロック・ファンは「前の2つは知ってるけど…」と言うかもしれないけれど、だいたい「三大」みたいなものは、そのうちのひとつは忘れられてしまうものだ。
本作は1971年10月にリリースされたユーライア・ヒープの3rdアルバムだ。
原題はイージーな英語なのに、邦題は見たこともない文字の並びが想像力を掻き立てる。実存主義か何かの哲学用語みたいだ。怖いもの見たさでついつい聴いてみたくなるというものだ。昔の洋楽担当者は一生懸命考えたものだなあと思う。50年経ってもまだちゃんとこの邦題が使われているのも嬉しいものだ。変なジャケットも良い。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 対自核
2 自由への道
3 七月の朝
SIDE B
1 瞳に光る涙
2 悲嘆のかげり
3 当為
4 ラヴ・マシーン
A1「対自核」は、バンドの代表曲だ。ぐいぐいと遠慮のないリズム隊に、キーボードとコーラスとギターが渾然一体となって襲う暴風雨のようでありながら、メロディがキャッチーでカッコいい。日本ではハード・ロックの代表曲のひとつぐらいに有名になったが、しかし本国イギリスのチャートには入らなかった。全体にキャリアを通じてシングル・ヒットには恵まれなかったバンドだ。
後のメロディック・メタルの元祖とも言われるが、ちゃんとメロディが書けるのが彼らの強みだ。
全編を覆う大げさなほどドラマチックなキーボードだけでなく、アコギを使ったメロディアスな曲や、ピアノを使ったバラードなどもあり、静と動のメリハリがあって最後まで飽きずに聴ける。ヴォーカルもいい声で、メンバーによるコーラスもしっかり整えている。ハード・ロックとアート・ロックの要素が両方ある感じだ。
アルバムは全英39位、全米93位とイマイチなセールスだが、日本のオリコン・チャートではなんと5位と、英米よりも特に日本で愛されたバンドだったようだ。
メンバーの交代や死去、レコード会社の倒産、長い停滞期などを経て、オリジナル・メンバーはギタリストのミック・ボックスのみになったものの、なんと今なお現役である。
昨年、25枚目のアルバムをリリースし、今年は結成55周年を記念して、フェアウェル・ツアーを行うと発表した。このフェアウェル・ツアーは2〜3年続く予定だという。
↓ 日本のハード・ロック・ファンならみんな知っていた代表曲「対自核」。
↓ 聴きようによってはスマッシング・パンプキンズみたいに聴こえなくもない「瞳に光る涙」。
(Goro)